「大塚国際美術館」ひとり旅(11)〜エピローグ
大変短い時間ではあったが、私なりに大塚国際美術館への旅は意味のある旅となった。館内に入ったときにライフログリストバンド “UP” のストップウォッチモードをONにして歩き始めたが、結果として館内だけで約15,000歩数歩いていた…。ともあれ今回はエピローグをお届けしたい。
約半日の大塚国際美術館巡りだったが、それなりに醍醐味を味わうことが出来た。とにかく環境展示と古代・中世あたりを主に鑑賞し、時間がなければ近代や現代作品は端折ることを覚悟していたが、ともかく館内全体を回ることができたのは嬉しかった。
最後の展示スペースである2階を回って満足した私は一休みするため、そしてミュージアムショップを覗いてみようとシスティーナ・ホールのあるB3階まで降り、まずはそこにあったコーヒーショップで喉を潤し足を休めることにした。ウィークディに来たこともあってか館内のほとんどの場所はここが美術館か…と訝しくなるほど人が少なく思う存分に好きな作品の前に佇むことができたのも幸いだった。
別にひとり旅なのだからしてもっと頻繁に休息を取りながら鑑賞すればよい理屈だが、初めての来館でもありどれほどの時間が必要なのかが分からなかったことでもあり、昼食以外は休み無しで歩きに歩いたのでかなり足腰にきている。
実は展示スペースの多くの場所には椅子やベンチシートが置かれ座りながら眺めたり一休みが可能な工夫がなされている。しかしその椅子にさえ座る余裕もなく歩き続けた。というより写真を撮ることに気がとられ、ある場所では中央に置かれていた椅子に臑をぶつけて擦りむいてしまったりもした。それだけ夢中になっていた…。
これまで一連のレポートは特に印象が深かった作品や展示を取り上げたが、無論その他にも素晴らしい作品が多々あった。
例えば、B3フロアーの「鳥占いの墓」という環境展示の前にあるのが「貝殻のヴィーナス」というポンペイの庭園にあった壁画である。解説によれば庭園は植物の豊かさを象徴すると共に植物の美しさを呈示する場所でもあるからして、庭園にヴィーナスを配置するにはふさわしい女神なのだという。

※ポンペイ壁画「貝殻のヴィーナス」
トレチャコフ美術館にある板絵「ウラディミールの聖母子」は国宝級の扱いだという。1100年頃に制作された正当なビザンティン美術作品でその後のロシアでの聖母子イコンに多大な影響を与えた逸品である。

※トレチャコフ美術館蔵「ウラディミールの聖母子」
ブリューゲルの「バベルの塔」も興味深い作品だ。ここには人間の傲慢さ、文明の崩壊そして言語と心の混乱による人類の不和など様々なイメージが訴えられている。

※ブリューゲル作「バベルの塔」
それからギルダンダイオの「ジョヴァンナ・トルナブオーニの肖像」は女性の横顔を端正に描いた作品だが解説にある「ルネサンス時代のもっとも美しい肖像のひとつ」とある。しかし私にはそれほどの肖像とは思えないのだが…。個人的にはボッティチェリの「美しきシモネッタの肖像」の方が良いと思うが、まあ好みの問題か…(笑)。

※ギルダンダイオ作「ジョヴァンナ・トルナブオーニの肖像」
ダヴィッド・ジャック=ルイの「皇帝ナポレオン1世と皇后ゼョゼフィーヌの戴冠」というルーヴル美術館蔵の大作にも圧倒された。

※ダヴィッド・ジャック=ルイ作「皇帝ナポレオン1世とと皇后ゼョゼフィーヌの戴冠」。621×979cmもの大作
ホルバインの有名なだまし絵「大使たち」の前に立ち、中央に描かれたリュートなどをまじまじと眺めたり、横に立ち前面に描かれた髑髏がそれらしく見える位置を探したりもした。

※ホルバイン作「大使たち」
デューラーの「自画像」や「アダムとエヴア」、パルミジャニーノの「凸面鏡の自画像」もよく見知った絵のひとつだ。

※パルミジャニーノ作「凸面鏡の自画像」
さらにミレーの「晩鐘」と「落ち穂拾い」の前にもしばし立ちすくんだしゴーギャン作「ヴァイルマティ」やモローの「一角獣」も逸品だった。


※ミレー作「晩鐘」と「落ち穂拾い」
そういえば大塚国際美術館へ旅する直接のきっかけはTwitterでトブさんが来訪されたレポートを見たことだったが、大塚国際美術館の名はすでに知っていた…。しかしどういうきっかけで大塚国際美術館の存在やその名前を知り、記憶の隅に残っていたのかについてはまったく思い出せなかった。

※ゴーギャン作「ヴァイルマティ」

※モロー作「一角獣」
帰宅した数日後、ちょうど墓参りの相談で久しぶりに電話をくれた実弟に旅行したことを告げた。弟は鼻で笑うような息づかいで「昔、僕が大塚国際美術館の存在を教えたことがあったけど、それこそ兄貴は鼻も引っかけなかったなあ」と言った...。
どうやらその名が記憶の底にあったのは弟からの情報だったようだが、物事は機が熟さないと動かないものなのだ(笑)。
ともあれ、私にとって短くも充実した旅は終わった。
■大塚国際美術館
約半日の大塚国際美術館巡りだったが、それなりに醍醐味を味わうことが出来た。とにかく環境展示と古代・中世あたりを主に鑑賞し、時間がなければ近代や現代作品は端折ることを覚悟していたが、ともかく館内全体を回ることができたのは嬉しかった。
最後の展示スペースである2階を回って満足した私は一休みするため、そしてミュージアムショップを覗いてみようとシスティーナ・ホールのあるB3階まで降り、まずはそこにあったコーヒーショップで喉を潤し足を休めることにした。ウィークディに来たこともあってか館内のほとんどの場所はここが美術館か…と訝しくなるほど人が少なく思う存分に好きな作品の前に佇むことができたのも幸いだった。
別にひとり旅なのだからしてもっと頻繁に休息を取りながら鑑賞すればよい理屈だが、初めての来館でもありどれほどの時間が必要なのかが分からなかったことでもあり、昼食以外は休み無しで歩きに歩いたのでかなり足腰にきている。
実は展示スペースの多くの場所には椅子やベンチシートが置かれ座りながら眺めたり一休みが可能な工夫がなされている。しかしその椅子にさえ座る余裕もなく歩き続けた。というより写真を撮ることに気がとられ、ある場所では中央に置かれていた椅子に臑をぶつけて擦りむいてしまったりもした。それだけ夢中になっていた…。
これまで一連のレポートは特に印象が深かった作品や展示を取り上げたが、無論その他にも素晴らしい作品が多々あった。
例えば、B3フロアーの「鳥占いの墓」という環境展示の前にあるのが「貝殻のヴィーナス」というポンペイの庭園にあった壁画である。解説によれば庭園は植物の豊かさを象徴すると共に植物の美しさを呈示する場所でもあるからして、庭園にヴィーナスを配置するにはふさわしい女神なのだという。

※ポンペイ壁画「貝殻のヴィーナス」
トレチャコフ美術館にある板絵「ウラディミールの聖母子」は国宝級の扱いだという。1100年頃に制作された正当なビザンティン美術作品でその後のロシアでの聖母子イコンに多大な影響を与えた逸品である。

※トレチャコフ美術館蔵「ウラディミールの聖母子」
ブリューゲルの「バベルの塔」も興味深い作品だ。ここには人間の傲慢さ、文明の崩壊そして言語と心の混乱による人類の不和など様々なイメージが訴えられている。

※ブリューゲル作「バベルの塔」
それからギルダンダイオの「ジョヴァンナ・トルナブオーニの肖像」は女性の横顔を端正に描いた作品だが解説にある「ルネサンス時代のもっとも美しい肖像のひとつ」とある。しかし私にはそれほどの肖像とは思えないのだが…。個人的にはボッティチェリの「美しきシモネッタの肖像」の方が良いと思うが、まあ好みの問題か…(笑)。

※ギルダンダイオ作「ジョヴァンナ・トルナブオーニの肖像」
ダヴィッド・ジャック=ルイの「皇帝ナポレオン1世と皇后ゼョゼフィーヌの戴冠」というルーヴル美術館蔵の大作にも圧倒された。

※ダヴィッド・ジャック=ルイ作「皇帝ナポレオン1世とと皇后ゼョゼフィーヌの戴冠」。621×979cmもの大作
ホルバインの有名なだまし絵「大使たち」の前に立ち、中央に描かれたリュートなどをまじまじと眺めたり、横に立ち前面に描かれた髑髏がそれらしく見える位置を探したりもした。

※ホルバイン作「大使たち」
デューラーの「自画像」や「アダムとエヴア」、パルミジャニーノの「凸面鏡の自画像」もよく見知った絵のひとつだ。

※パルミジャニーノ作「凸面鏡の自画像」
さらにミレーの「晩鐘」と「落ち穂拾い」の前にもしばし立ちすくんだしゴーギャン作「ヴァイルマティ」やモローの「一角獣」も逸品だった。


※ミレー作「晩鐘」と「落ち穂拾い」
そういえば大塚国際美術館へ旅する直接のきっかけはTwitterでトブさんが来訪されたレポートを見たことだったが、大塚国際美術館の名はすでに知っていた…。しかしどういうきっかけで大塚国際美術館の存在やその名前を知り、記憶の隅に残っていたのかについてはまったく思い出せなかった。

※ゴーギャン作「ヴァイルマティ」

※モロー作「一角獣」
帰宅した数日後、ちょうど墓参りの相談で久しぶりに電話をくれた実弟に旅行したことを告げた。弟は鼻で笑うような息づかいで「昔、僕が大塚国際美術館の存在を教えたことがあったけど、それこそ兄貴は鼻も引っかけなかったなあ」と言った...。
どうやらその名が記憶の底にあったのは弟からの情報だったようだが、物事は機が熟さないと動かないものなのだ(笑)。
ともあれ、私にとって短くも充実した旅は終わった。
■大塚国際美術館
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