スティーブ・ジョブズ、Macintoshリリース直後の写真を考察
超有名人であるスティーブ・ジョブズの姿を撮影した写真はそれこそ星の数ほどもあるかも知れないが、先日ひょんなことで1枚の写真が目に付き気になった…。以前どこかで見た記憶があるがその写真は雑誌の見開きに載っていたものでジョブズがMacintoshをリリースした直後のものと思われる。この時彼は29歳直前だったはずだ。
それはたぶん1984年の1月あたりに撮影されたものではないかと推察される…。なぜならスティーブ・ジョブズの着衣がセーターだから冬場であっただろうこと。そして背景というか、撮影された場所はApple本社内ジョブズのオフィスコーナーと思われるが、後ろにはMacintosh 128Kが2台映っている。
これだけだと撮影時期を特定するには些かデータ不足のように思えるが、実はこの写真を見たときジョブズの着ているセーターの柄に見覚えがあった…。

※PEOPLE 誌2011年10月24日号に載った若きスティーブ・ジョブズの写真
確認すると私の記憶にあったのはInfoWorld誌 1984年2月13日号の表紙だった。
そこにはカラー写真で机上に乗せたMacintoshを指さしたスティーブ・ジョブズの姿が載っているがまさしく同じセーターに違いない。

※InfoWorld誌 1984年2月13日号の表紙
ちなみにMacintoshは1984年1月24日に年次株主総会の席で正式発表された。したがってこの時期の関連雑誌にはプロモーションの意図もあってジョブズの姿やコメントが多々飛び交うが、このInfoWorld誌の表紙もそうした一環に違いない。そして状況証拠でしかないものの、この表紙の写真はApple本社で1984年1月24日以降に撮影が許されたと考えるのが普通だろう。
これより前に一部のディストリビュータ向けの説明会みたいなものがあったようだし、極一部のメディアにはプロトタイプのMacintoshを見せていたようだが、あくまで公式的な意味では発表の1984年1月24日直後に多くのメディアを集めて撮影の機会を与えたのだろう。
さて話を先のモノクロ写真に戻すが…。
この写真はスティーブ・ジョブズが2011年10月5日、56歳の若さで永眠した際にそのオマージュとして米国「PEOPLE」誌が同月24日号として発刊した際に用いられた写真の一つである。
自身のオフィスというか机上の前でジーンズとセーター姿のジョブズは足を上げ、挑戦的な視線をこちらに向けている。そして繰り返すが彼のディスクには2台のMacintoshと机上のボードになにやら写真および名刺、付箋などが貼られているのがわかる。
先日この写真を見た知人は「相変わらずスティーブ・ジョブズは気むずかしい顔してるな…」と呟いたが、実は私が本稿をまとめようと思ったのはこの彼の言葉が発端となった。なぜなら私はこの「PEOPLE」誌の魅力的なスティーブ・ジョブズの写真と同じ時に撮られたと思われる別の写真を所持していたからだ。
まあ、知ったような物言いをするのをお許しいただきたいが、写真…特に報道写真といったものはインパクトが強いだけにその撮られた背景をよくよく理解しないと意図を曲解しがちなのだ。写真は真実であり事実を捉えたものではあるが、その多くには明らかに撮影者や編集者の意図が入り込んでいる。
問題のスティーブ・ジョブズのこの写真にしても実際には数十枚…いやもっと多くの写真が撮られているはずで、ここに載ったのはその多くの写真から編集側が選んだたった一枚なのだ。
余談ながら大昔、日経新聞社が私の自宅に取材に来た。取材の目的は当時まだ珍しいと思われていたデジタル書斎といった話を聞きにこられたが、同行したカメラマンが狭い自室に座っている私に向けてシャッターを切ったのはフィルム5,6本分にもなった。しかし新聞に載った写真は無論一枚限りなのは当然としても、その写真に写った私の顔は口を尖らせたもので100枚以上もの写真を撮って選んだのがこの一枚か…と悪意を感じたことがあった(笑)。
新聞も雑誌もそしてテレビも、インタビューとか取材といえば聞こえは良いが、その多くがすでに制作側で意図したシチュエーションが決まっているものだ。したがってこのスティーブ・ジョブズの写真にしても彼が不機嫌であったとか生意気でこのような挑戦的な…ある意味気取ったポーズで視線をカメラに向けたと言うより、カメラマンがそう願ったという事の方が正解なのだ。
それを証明する問題の写真をお見せしよう。
その写真は前記の写真と比べるとかなりワイドなもので、かつ少し左側に寄った位置から撮影されている。ために机上の様子がよりはっきりと分かり、Macintoshは実は3台で一番左側にはMacPaintが起動しスーザン・ケアの描いたお馴染みの東洋の女の絵(元絵は橋口五葉作の「髪梳ける女」)が表示されているのが見える。

※別途筆者が入手していたオフィスのスティーブ・ジョブズ写真
なによりも印象的なのは申し上げるまでもなくスティーブ・ジョブズの表情だ。先ほどの写真とは違い照れ笑いなのか、左手を口に当てて笑っている。ただしその姿は同じシーンズと縞のセーター、左手首には腕時計といったまったく同じ出で立ちだ。さらに机上の様子を比較すると、限られた部分でしか判断できないもののボードや机上に配されている写真や付箋といったアイテムを見ればこれが同時期に撮影されたものと考えてまず間違いないことも分かる。
知人に当該写真を見せたところ大変意外だという顔をしていたのが面白かった。ことほど左様に写真は事実を伝えてくれるが、文字通り流れていく時間の一瞬を捉えたものであり、ましてやそこにはカメラマンや編集者側の意図がきちんと存在することも理解しておかないと誤解の元となる。
そもそもスティーブ・ジョブズの写真で笑顔のものを見る機会が少ないものの、それは決して彼が笑わなかったわけではなく、選択者にセレクトされた物を我々が見ているに過ぎないからなのだ。
スティーブ・ジョブズの写真を見るとき、そんなことを念頭に入れて眺めるとまた違った側面が見えてくるかも知れない。
それはたぶん1984年の1月あたりに撮影されたものではないかと推察される…。なぜならスティーブ・ジョブズの着衣がセーターだから冬場であっただろうこと。そして背景というか、撮影された場所はApple本社内ジョブズのオフィスコーナーと思われるが、後ろにはMacintosh 128Kが2台映っている。
これだけだと撮影時期を特定するには些かデータ不足のように思えるが、実はこの写真を見たときジョブズの着ているセーターの柄に見覚えがあった…。

※PEOPLE 誌2011年10月24日号に載った若きスティーブ・ジョブズの写真
確認すると私の記憶にあったのはInfoWorld誌 1984年2月13日号の表紙だった。
そこにはカラー写真で机上に乗せたMacintoshを指さしたスティーブ・ジョブズの姿が載っているがまさしく同じセーターに違いない。

※InfoWorld誌 1984年2月13日号の表紙
ちなみにMacintoshは1984年1月24日に年次株主総会の席で正式発表された。したがってこの時期の関連雑誌にはプロモーションの意図もあってジョブズの姿やコメントが多々飛び交うが、このInfoWorld誌の表紙もそうした一環に違いない。そして状況証拠でしかないものの、この表紙の写真はApple本社で1984年1月24日以降に撮影が許されたと考えるのが普通だろう。
これより前に一部のディストリビュータ向けの説明会みたいなものがあったようだし、極一部のメディアにはプロトタイプのMacintoshを見せていたようだが、あくまで公式的な意味では発表の1984年1月24日直後に多くのメディアを集めて撮影の機会を与えたのだろう。
さて話を先のモノクロ写真に戻すが…。
この写真はスティーブ・ジョブズが2011年10月5日、56歳の若さで永眠した際にそのオマージュとして米国「PEOPLE」誌が同月24日号として発刊した際に用いられた写真の一つである。
自身のオフィスというか机上の前でジーンズとセーター姿のジョブズは足を上げ、挑戦的な視線をこちらに向けている。そして繰り返すが彼のディスクには2台のMacintoshと机上のボードになにやら写真および名刺、付箋などが貼られているのがわかる。
先日この写真を見た知人は「相変わらずスティーブ・ジョブズは気むずかしい顔してるな…」と呟いたが、実は私が本稿をまとめようと思ったのはこの彼の言葉が発端となった。なぜなら私はこの「PEOPLE」誌の魅力的なスティーブ・ジョブズの写真と同じ時に撮られたと思われる別の写真を所持していたからだ。
まあ、知ったような物言いをするのをお許しいただきたいが、写真…特に報道写真といったものはインパクトが強いだけにその撮られた背景をよくよく理解しないと意図を曲解しがちなのだ。写真は真実であり事実を捉えたものではあるが、その多くには明らかに撮影者や編集者の意図が入り込んでいる。
問題のスティーブ・ジョブズのこの写真にしても実際には数十枚…いやもっと多くの写真が撮られているはずで、ここに載ったのはその多くの写真から編集側が選んだたった一枚なのだ。
余談ながら大昔、日経新聞社が私の自宅に取材に来た。取材の目的は当時まだ珍しいと思われていたデジタル書斎といった話を聞きにこられたが、同行したカメラマンが狭い自室に座っている私に向けてシャッターを切ったのはフィルム5,6本分にもなった。しかし新聞に載った写真は無論一枚限りなのは当然としても、その写真に写った私の顔は口を尖らせたもので100枚以上もの写真を撮って選んだのがこの一枚か…と悪意を感じたことがあった(笑)。
新聞も雑誌もそしてテレビも、インタビューとか取材といえば聞こえは良いが、その多くがすでに制作側で意図したシチュエーションが決まっているものだ。したがってこのスティーブ・ジョブズの写真にしても彼が不機嫌であったとか生意気でこのような挑戦的な…ある意味気取ったポーズで視線をカメラに向けたと言うより、カメラマンがそう願ったという事の方が正解なのだ。
それを証明する問題の写真をお見せしよう。
その写真は前記の写真と比べるとかなりワイドなもので、かつ少し左側に寄った位置から撮影されている。ために机上の様子がよりはっきりと分かり、Macintoshは実は3台で一番左側にはMacPaintが起動しスーザン・ケアの描いたお馴染みの東洋の女の絵(元絵は橋口五葉作の「髪梳ける女」)が表示されているのが見える。

※別途筆者が入手していたオフィスのスティーブ・ジョブズ写真
なによりも印象的なのは申し上げるまでもなくスティーブ・ジョブズの表情だ。先ほどの写真とは違い照れ笑いなのか、左手を口に当てて笑っている。ただしその姿は同じシーンズと縞のセーター、左手首には腕時計といったまったく同じ出で立ちだ。さらに机上の様子を比較すると、限られた部分でしか判断できないもののボードや机上に配されている写真や付箋といったアイテムを見ればこれが同時期に撮影されたものと考えてまず間違いないことも分かる。
知人に当該写真を見せたところ大変意外だという顔をしていたのが面白かった。ことほど左様に写真は事実を伝えてくれるが、文字通り流れていく時間の一瞬を捉えたものであり、ましてやそこにはカメラマンや編集者側の意図がきちんと存在することも理解しておかないと誤解の元となる。
そもそもスティーブ・ジョブズの写真で笑顔のものを見る機会が少ないものの、それは決して彼が笑わなかったわけではなく、選択者にセレクトされた物を我々が見ているに過ぎないからなのだ。
スティーブ・ジョブズの写真を見るとき、そんなことを念頭に入れて眺めるとまた違った側面が見えてくるかも知れない。
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