「会社概要」に思う〜アップルは変な会社!?

アップルフリークの1人として、アップルに対して悪意を感じさせるニュースには正直怒りを覚えるが、アップルという会社もいささか...というより大いに変わった会社であり、どうにもとらえどころの無い不思議な会社だと私は常々感じてきた。今回はそんなアップルジャパン、すなわちApple Inc.の日本法人のお話しをしてみようと思う。


さて、今日4月1日はAppleの創業記念日だ。それにちなんで…ということではないものの、これまでにも私自身が実際に体験したことも含めて当ブログでいくつかのエピソードをご紹介してきた。しかしアップルジャパンという会社は実に不思議な会社である。

過日取引先の方とFaceTimeで話していたとき、「そういえばアップルジャパンの会社概要ってウェブサイトのどこを見れば載ってるんですか?」と聞かれた…。その方は興味本位ではなく、社内向けの報告書の類にそうした情報、データを記載したいと考えたが分からなかったのだという。

さて、アップルジャパンは申し上げるまでもなく外資系企業である。しかし外資系といっても現在では珍しいわけでもなく日本国内でビジネスを展開するにはそれなりの情報開示も必要だと考えるのが普通だが、アップルジャパンは一筋縄ではくくれない企業なのだ(笑)。

とはいえ私自身、現実には様々なアップルジャパンの担当者たちにお世話になったわけで、そうした点については心から感謝の気持ちを忘れるわけではないが、ビジネス相手としてこれほど神経をすり減らす取引先企業は他には見受けられない...。

StrangeApple.jpg

超マイクロ企業だった私の会社も1990年当たりから時代の先端を示すソフトウェア開発を重ねていった実績を評価され、日本を代表とする大手企業と直接取引をさせていただいた。
一例をあげればキャノン、キヤノン販売、日本電信電話(NTT)、富士写真フイルム、ソニー、リコー、エプソン、シャープ、ビクター、パイオニアなどなど親密度はそれぞれ違うものの皆蒼々たる大企業である。そして事がビジネスだけに仕事自体は大変ではあったが意思疎通できないといった致命的な問題には至らなかったし一部の企業やその担当者を除けば皆さん紳士・淑女であった。

しかし...である。アップルジャパンは規模的には前記した企業と比べれば...特に私たちがお世話になった時代は失礼ながら規模が小さな会社であった。とはいえ我々にとっては正しく総本山でありアップルジャパンを無視してこの市場でビジネスを展開することはできなかったわけで、接触を深める努力を怠るわけにはいかなかった。

そう言えば、米国本社はともかくアップルジャパンという企業はメーカーではない。別に悪い意味での物言いをするつもりはないが、あくまで日本市場へ関連製品を販売流通させる会社である。したがって現在もそうだと思うがAppleという企業方針の決定や企画の多くに関してアップルジャパンは決定権がない...あるいは極端に小さいと聞いている。

当時にしても関連のシステムソフトウェアをデベロッパーの製品に同梱する許可を求める契約は米国本社とやらなければならなかった。では…何の為の日本法人なのかとデベロッパーやディストリビュータなどの間で「アップルジャパン不要論」といった話しも面白可笑しく登場したものだ。

事実歴代のアップルジャパンの社長の中には日本市場独自のユニークさを打ちだそうとして更迭された人もいるという。要は日本法人とはいえその方針やノルマに関してはすべて本社の命じるままに実行しなければならなかった…。

したがってビジネスを進める上で理不尽なことや、日本の市場には合わないからとアップルジャパンに進言しても残念ながらそうした意見が聞き届けられ、改善され受け入れられることはまず無いと思わなければならない。かつてスティーブ・ジョブズにクレームの手紙を出したことがあったが、その結果は出す前から予想されることだった(笑)。

スティーブ・ジョブズは「Appleはテクノロジーとリベラルアーツの交差点にいる(特異な)企業」と自慢げに言ったが、彼のいうニュアンスは本社の製品開発の環境には当てはまるだろうが、日本法人の販売戦略やデベロッパーらとの協調性といった面にはまったく当てはまらず実に泥臭い相手だった。

さて会社概要の話に戻るが、どのような企業でもウェブサイトを持っているからには、それは企業運営の一環、情報開示および広告であり、告知のツールで販売の一助とすべきものだ。したがって一般的には目立たないまでも「企業概要」「企業情報」とか「会社案内」といったリンクを作り、商号・設立年月日・所在地・沿革・役員リスト・営業品目・従業員数などが一覧できるようになっているものだ。

海外の企業に関してはよく知らないが、少なくとも日本ではその種の情報を明記するのが一般的となっている。それは消費者は勿論、市場への基本的な配慮でもある。
ちなみにソニー、NTT、日立製作所、パナソニック、東芝、シャープといった企業のサイトは若干手法は違うものの皆トップページにそうした情報の入り口を設けている。無論外資系の企業…例えば日本マイクロソフトにしても会社概要ページはある。また非上場のアマゾンジャパンにしても簡単ながら会社概要を載せている。

対してアップルジャパンのウエブサイトをご覧いただくとわかるが、トップページに企業情報へ誘うリンクは見当たらない。それらしいのは「Appleの連絡先」というリンクだが、その飛び先には所在地は明記されているものの一般的な企業情報は明記されていない。

まあApple Inc.は株式会社ではなく現在アップル インコーポレイテッドの100%子会社の日本法人であり、日本版LLCともいわれる合同会社だ。したがって閉鎖性(決算非公開、株主総会非設置など)を有しており、公告は任意の新聞紙上だし上場企業のように一般向けに企業情報を公開する責務を負わない。だからこその閉鎖性とも思えるが、これは今になって始まったことではないのだ。

まあ企業情報はともかく代表社員(株式会社の代表取締役社長)が誰なのか…といったことについてもアップルジャパンのサイトから確認するのは難しい。米国本社の役員たちは顔写真で掲載されているが、アップルジャパンの代表社員が誰なのかはサイトからはなかなか分からない。

私が調べた範囲ではApple Storeページ「返品・送料を含む販売条件」の一番下にある「特定商取引に関する法律」に基づく表示という項目に「業務責任者」として「社長 ダニエル・ディチーコ」と明記されているだけだ。一応そのページのURLを載せておくが、ググるのではなく是非1度アップルジャパンのトップページから探してみて欲しい。

これはアップルユーザーたちが集まった際のゲームとしても面白い座興かも知れない。トップページから誰が最初に…何秒で…アップルジャパンの現社長が表記されている当該ページにたどり着くか…を競うのも面白いかも知れない。それほど分かりにくいのだ。無論このダニエル・ディチーコ氏がいつ就任したかは分からない…。

Appleはグローバル企業であり世界有数の大企業となったが、アップルジャパンはこれまで見てきたように法人としては極端にコンパクトであり閉鎖的な組織だと言うことがわかる。何故なら合同会社すべてがそうなのかといえば、やはりアップルジャパンはビジネスの形態にも依存するのだろうが特別のような気がする。

例えば「西友」「シスコシステムズ」「ユニバーサル ミュージック」「日本ケロッグ」「IHG・ANA・ホテルズグループジャパン」などは皆合同会社だが、いわゆる会社概要といったページを公開している。

別に代表者の名前や資本金といった情報を知らなくても現実のビジネスに支障はないだろう。何しろ親会社はあのAppleなのだから…信用調査も不要だろう(笑)。
またそれらが最新情報なのか…正しいかはともかく就職情報関連のウェブサイトなどからApple Japan合同会社の代表者や社員数、資本金などを知ることはできるが、自社のウェブサイトに載せて問題がある情報ではないはずだ。だからなのか、本社の存在が巨大であればあるほどアップルジャパンの存在はどこか希薄なのである。

ちなみに「リクナビ」や「日経キャリア」の情報によれば、現在代表者は前記の通りダニエル・ディチーコ、従業員数は1,800名、資本金は1億2800万円とのことだ。



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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員