Apple Watchが売れていない?だとすれば...

Apple Watchが販売開始後、その勢いが鈍っているという情報がある。反面アップル自身、ウェブのWatchストアには「グレイテスヒット」と自画自賛している。無論Appleは出荷本数などについて明言していないからその真偽の程はわからないものの周りを見回しても現時点では目立つに至っていない感じはする...。


先月7月31日、Apple Watchが新たに3つの国、トルコ、ロシア、ニュージーランドで発売となった。相変わらず話題性は十分だが果たして売れているのだろうか...。
無論売れる売れないをいちユーザーが心配する必要もないしまだ1世代の製品だ。これからより認知されていくのだろうが、もし売上げが鈍化しているとすれば何が原因と考えられるのだろうか。今回はそんな贅言を繰り広げてみたい。

アップルの販売目標と実際の販売数にどれほど違いが生じているのかはまったく不明だが、これからの戦略を考える上で重要なことと思われる点は「ファッション性に注視し過ぎないこと」だと思っている。そして製品のラインナップも少し見直した方がよいかも知れない…。単調過ぎるかも知れない。

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※Apple Watchは売れているのだろうか...


当ブログではこれまでもApple Watchに関して少々辛辣な評価をしてきたが、それは製品の出来についてではない。また個人的にもApple Watchは気に入っているし面白いデバイスだと思う。したがって日々寝るとき以外は私の左手首にある。しかしそのこととアップルのビジネス戦略の良し悪しは別問題である。
まあ、すべて「素敵」「すばらしい」と誉めておけば角が立たないのだろうしアップルウケが良いのだろうが、それが出来ない損な性分なのだ(笑)。

さて本題だが、アップルの製品だからしてデザインに心を配るのは当然のことだし、だからこそのアップルでもある。その仕上がりの良さや拘りが我々ユーザーの気持ちを高ぶらせるのだ...。しかしそのこととファッショナブルであるかどうかは相容れないものがある。

それに傾向としてすでに購入したユーザーの満足度は高いと思われる。買うべき人は私も含めて発売と同時に予約をしたはずだし、その実物を確認の上で購入された人たちの多くは自身の選択に満足しているに違いない。事実Apple Watchを使い始めると健康にも留意するようになり、それなりの効果も上がっているという情報もあるようだ。
問題は腕時計といったものに興味もなくiPhone自体に満足している人たちの財布の紐を緩ませるにはどうしたら良いか…といったことになる。

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※Apple自身は「グレイテストヒット」と自画自賛しているが


Apple Watchのビジネス上の問題はファッション世界に足を踏み入れたことだと考えている。無論ウェアラブルデバイスとして身につけるアイテムならファッションという世界を無視出来なくなるだろうが、現行のApple Watchは数多ある腕時計のひとつとして見ても決してファッショナブルではない。Apple Watchをこれまでどおりアップル独特なデジタルデバイスとして世に問うべきだったのを “いたずらに" ファッション性をアピールした点に不協和音が生じているのではないか。ファッション・アクセサリーを装っていることが旨く行ってないのではないか...。

Apple WatchはMacやMacBookが、あるいはiPodやiPhoneがそうであったように、デザインに優れた製品ではあるものの現時点ではファッショナブルな点を主張すべき製品ではないと思う。
腕時計なのか、デジタルデバイスなのかと2者選択する必要などないのかも知れないが、私は腕時計というものに、ファッション・アイテムに執着し過ぎたのではないかと思っている。

持論だがApple Watchの時計画面…フェイスはある意味機能というよりApple Watchというデバイスのホーム画面ではないか…。したがって腕時計の形はしていても腕時計が主ではないはずだ。しかし単なるウェアブルデバイスではファッションの世界へ入り込めないとアップルが考えた結果、腕時計という点を強調したかったのではないか。

市場の戸惑いはアップルがデジタルデバイスをファッション雑誌に広告し、それを受けてジャーナリズムがファッション、ファッショナブルと持ち上げた点にあるように思う。しかしApple Watchはファッショニスタ(fashionista)の心を捉えるまでには至っていないのだ。

本来はもっともっとApple Watchの機能性やユーザーの日常を変える役割、そしてその未来に向かってのコンセプトを理解してもらうべきのところをファッションに意識を向けてしまったツケが出ているのではないか。腕時計を強調したことでもあり、腕時計嫌いの人たちはもとより、腕時計により拘りを持つ人たちの両方からダメ出しをされた感じか…。

ともかく残念ながら現在のスクウェア型スクリーンを腕時計に見立てたデザインは、デジタルデバイスとしては優れていても世界のファッションリーダーの琴線に触れるものではないと考える。

もっとミーハー的発想で具体的にいうなら…例えばアンジェリーナ・ジョリー、キャメロン・ディアス、エマ・ワトソン、キーラ・ナイトレイといった世界有数の女優陣たちの腕にと考えても彼女らの知性と美とは釣り合いがとれない…。もっといえばマリリン・モンローやオードリー・ヘプバーンの腕に似合うとも思えない(笑)。

事実米女優のアナ・ケンドリック(Anna Kendrick)はApple Watchをして「新たなゴールドアクセサリーのダサいスタンダードを作り上げた…」と酷評しているそうだ(笑)。
まあ “ダサイ” とまで言われるとアップルフリークとしては「むっ!」とするが、デジタルデバイスとしてのデザインは秀逸ながら “ファッショナブルではない” といっておこうか…。

いや女優に限らず、ショーン・コネリー、ウィル・スミス、ジャン・レノ、ロバート・ダウニー・Jr、アーノルド・シュワルツェネッガー、キアヌ・リーブス、クリント・イーストウッド、ジョージ・クルーニー、トム・ハンクス、ハリソン・フォード、ブラッド・ピットそしてブルース・ウィリスらの腕に現行のApple Watchが好んで着けられるとは思えないのだ。

悪たれついでにいうなら、現在Apple Watch一番のファッション性を売り込んでいるApple Watch Editionは iOSの面を別にするなら原価1万円ほどのデジタルデバイスを18Kの側で飾り立て最高200万円で販売するというこれまで IT企業になかったビジネスに手を染めた点に違和感を覚えるのだ。はっきりいえば ”高額な品” と “高級品” は違うのだ…。

Apple Watchが iPodや iPhoneのように時間を経るにしたがって世界を変えていく製品になるのか、あるいはポシャるかは分からないが、いたずらにファッション世界に色目を使わず、そして若者たちの購買意欲を刺激する意味で販売価格を下げる努力も必要ではないだろうか。無論技術的には難しいと思うが、スクエア型だけでなく円形のApple Watchにも挑戦して欲しい…。

まあ…売れているのか、売れていないのかは確かに気になるが、企業としてリリースするすべての製品が大ヒットする必要もないのだろうし、相変わらずマスメディアがアップルの動向に過敏になっているだけかも知れない。

最後になるが、ご承知のようにApple WatchはiPhoneユーザーでなければ意味が無い。使ってみれば確かに便利で楽しいプロダクトに違いないが、現時点では「あったら素敵だしiPhoneを取り出す頻度も低くなるが、無いと決定的に不便という代物ではない」という点は弱点だ。
iPhoneを喰ってしまうのも困りものだろうが、Apple Watchにしかできない、あるいは近い将来 iPhoneに依存しないApple Watchが求められるに違いない。




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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員