ラテ飼育格闘日記(148)

オトーサンが住んでいる所は一応東京都だ。地図で示すとすれば東京都の境界を示す横長エリアの大体左右真ん中あたりに相当する三多摩地域である。これまで25年以上住み慣れた埼玉県と比較すると起伏の激しい緑豊かな土地であり、体験したことのない多くの野鳥、昆虫、草花そして動物たちと遭遇することになった。大げさでなく毎日何が起こるか分からない...。

 

以前住んでいた場所は埼玉県といっても駅の近くであり大きな商業施設が立ち並ぶ開けた場所だったから緑を意識することはほとんどなかった。それでも雀の鳴き声や夏になれば蝉の鳴き声も聞こえたし、秋になれば虫の音も楽しむことが出来た。しかしそれは多少の木々と草むらがあれば全国どこでも同じかも知れない...という程度だった。
マンションが建ち並ぶエリアだったこともあり、たまたま犬猫に出会うことがあっても他の動物は勿論、昆虫やらと出会うこともなく虫といえばゴキブリくらいなものだった(笑)。だから家の中にいわゆる害虫といったものが舞い込むこともなかったわけではないが、それは稀でありせいぜい蠅や蚊、そしてたまに蛾といった程度であったが、現在の住居は緑豊かなエリアであり草木の生い茂っている場所も桁違いに多い。したがって当然のことながら引っ越しして一番難儀したのは虫退治だった。

どこからともなく小蠅が入り込みカマドウマやダンゴムシが上がり込む。子供の頃にはこうした虫たちを手に取り遊んだものだが、なぜ大人になるとこうした虫たちを嫌悪したくなるのか自分でもよく分からないができることなら出会いたくない。
あの解剖学者の養老孟司氏は大の虫好きだそうだがテレビコマーシャルの中で「虫の住めない地球は人も住めなくなる...」といったことを言っている。そりゃあ理窟はそうだろうが蠅や蚊などの存在はやはり歓迎できるものではない(笑)。
確かにこの歳になると虫一匹にも命があり魂が宿っているかも知れないと思い、足元にうごめく蟻や木々にぶら下がっている蜘蛛などをあえて殺すことにためらいを覚えるようになった。だから、オトーサンは家の外にいる虫たちにはあえて危害を加えないが家の中に入ってくる不法侵入者には容赦しないというスタンスをとっている。とはいえ愛犬もいるわけだし、室内で強力な殺虫剤を多用するわけにもいかず真夏はなかなかに大変なのだ。
そして事実埼玉では体験したことのない出来事も多く、室内にかなり大きなムカデが入り込んだときにはパニックになった(笑)。

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※大好きなボールを咥えオトーサンと走るラテ


反面これまでには聞いたこともないほど鶯の「ホーホケキョ...ケキョケキョ...」といった鳴き声を季節中堪能できるし、蝉の混声合唱団が練習でもしているような中をラテと歩くのも楽しい。
近くに小さな池もあるからか、鴨がつがいで公園を横切り、キツツキがコンコンと澄んだ音で木をつつき、気がつくと赤とんぼの群れの中にいる...といった体験もできる。
春にはサクラの花びらに囲まれ、歩いているラテの背や頭に花びらが舞い落ちるし、春先から夏にかけては文字通りむせるような緑のアーチの中を、そして秋には息をのむように美しい紅葉の宇宙に浸ることができる。だから以前のようにわざわざ「桜を見に」とか「紅葉を見に」京都へ行こうといった発想がわかないほどである。
そういえばこの地に引っ越ししたのが2006年の12月だったが、オトーサンはGoogleで近隣の地形を概略頭に入れ、まだ紅葉が残っている道をラテと共に歩きはじめたことがあった。ただし引っ越しして数日しか経っていない時期であり勝手がわからないオトーサンは自分でも笑ってしまったものの夢のように美しい紅葉の雑林の中で迷子になってしまった。それほど見事な森林や公園がある地域なのである。

そんな中を毎日ラテと歩けばまずは虫に出会う...。嫌でも出会う。
蝶やトンボなどなら歓迎だが口の中に入りそうなほど大群の小さな虫たちに出会ったり、雨の後では足の踏み場もないほどのミミズが地を這う。
最初は随分と気味悪かったが、気にしていては歩けない。そして草むらにうごめくトカゲをラテが追いかけ、急に止まったかと思うとそこには石のように動かないカエルを発見。
力尽きて落ちた蝉をへっぴり腰で突っつくラテを笑いながらオトーサンは数メートル先に飛び交う見たこともない野鳥の姿に見とれる...といったことも多い。
これすべてラテとの散歩だから出会えることなのかも知れない。なぜなら変な物を拾い食いされては困ると可能な限りオトーサンは地べたを観察しているからだ。1人で歩くときは絶対地面にあるものなど気にしないのが普通だろうが、ラテとの散歩は必然的に眼の付け所が違うのである。だから普通に歩いていては分からないあれこれを発見することも多いのだろうと思う。

初めて蛇に出会ったことは以前ご紹介した。これまた正直嬉しい出来事ではないものの新しい発見であったことは確かである。
しかし究極...というのも大げだが先日これまたそこいらではお目にかかれないであろう動物に遭遇したのである。
オトーサンたちが朝の散歩でいつもの公園に向かう途中の上り坂を登り切ったとき、そう2,30メートル先だろうか、左から右に道路を横切り雑林に入る生き物が眼に入った。
最初は猫かと思ったが、猫なら大騒ぎするはずのラテが変に大人しい...。それに一瞬視覚に入っただけだが猫にしては少々変なのだ。
頭が小さく感じられ尻尾が太いのである。とはいっても逆光気味で距離も離れていたのだから確信はないものの納得いかないオトーサンはラテのリードを女房に預けてその場所に駈け寄った...。

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※これまで怖がっていた滑り台に初めて挑戦したラテ。少々へっぴり腰だが無事に滑り降りた(笑)


驚いたことにその動物は明らかに猫ではなかった。
雑林の中をオトーサンに気づきながらも平然と歩いているがフトこちらに顔を向けたとき「タヌキだ!」と思った。
無論オトーサンも本物のそれも生きているタヌキをまじまじと見た記憶がない。ともかく写真に収めようとしたが、何と言うことか...ラテとの散歩時には雨でもない限り女房がカメラを携帯するのが常なのにその朝に限って忘れたという(笑)。
この距離と薄暗い雑林の中というのでは高倍率のズームでもないとまともな写真は撮れないと思ったが無い物は仕方がない。腰に下げているiPhone 3GSを取り出してとにかく数枚の写真を撮ってみた。その間、こちらを振り向かせようとオトーサンはその未確認動物(UMA)に声をかけたりするが向こうは無視して平然としている。

オトーサンは散歩の途中もその未確認動物のことで頭がいっぱいだった(笑)。そういえば以前近郊でもタヌキが出るという話を思い出してやはりあれはタヌキかとも思ったがどうもタヌキにしては姿形が違うような気もする。
帰宅してから撮った写真を確認してみたが案の定自信を持って判断できるほどの出来ではない。やはり遠すぎた...。
しかし写真と記憶を頼りにインターネットで調べてみたが、アライグマみたいだが尻尾が違うしイタチの類かとも思ったがこれまた納得がいかない。
不十分ながらとにかくプリントアウトして夕方の散歩時に携帯し、どなたか近隣の方に聞いてみようと考えた。
ちょうど良い具合に公園に行くとラテの友達であるビーグル犬ハリーのオカーサンに出会った。ハリーがいるマンションはオトーサンが未確認動物の出会った十字路の一方角にあるのでご近所さんなのである。もしやとお聞きしてみるとハリーのオカーサンはご自身の携帯電話を取りだして写っている動物を見せてくれたがそれはまさしくオトーサンが見た動物そのものだった。

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※散歩中に初めて出会ったネコ目(食肉目)ジャコウネコ科に属する「ハクビシン」


お聞きしてみるとあの動物は「ハクビシン」だという。散歩から戻りあらためて調べてみるとまさしくその姿は間違いなくネコ目(食肉目)ジャコウネコ科に属する「ハクビシン」だった。
昨日今日に出くわしたのなら飼われていたものが逃げたり捨てられたりしたのかも知れないが、前にも出くわした人がいるということはすでに野生化しているものと思われる。
この「ハクビシン」は生息場所により畑などを食い荒らす嫌われ者のようだが、これから季節は冬に入り食べ物なども激減する野生動物にとって厳しい時期になる。
仲間がいるのかいないのかも不明だが是非また再会したいものである。

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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員