片思いのマシンNewton eMate 300との再会

仕事柄Apple がリリースしたほとんどのマシンを何らかの形で使い体験してきたが、ひとつだけ手に触れた程度で心残りのマシンがある。それがNewton eMate 300 だった。しかしいま縁あってそのマシンが手元にある...。 


私はApple IIシリーズは無論のこと、初代Macintoshをはじめその後のほとんどの機種を何らかの形で使った経験を持っている。またPippin@ATMARKやNewton MessagePad100も仕事柄手にしたし、特にNewton MessagePad 100は英語版ながら実際に使っていた時期がある。しかしeMate 300は日本での発売が正式になされていなかったこともあり米国のMacWorldExpo会場で触った程度しか縁がなかった。しかしずっと気になっていた…。 
今般Vintage Computer社にお願いして念願のeMate 300の完動美品を手配していただいた。 

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※念願のNewton eMate 300が届いた。巧く写真を撮るのがなかなか難しいマシンだ


■プロローグ 
Newton eMate 300は1996年の10月に発表され翌年に出荷された。当時のAppleは経営的に最低の状況にあったがこのeMate 300は未来を垣間見ることができる製品のひとつとして注目を浴びた。しかしスティーブ・ジョブズがAppleに復帰後、そのパワーをMacintoshに集中させることを理由にNewtonプロジェクトを解散させたことはまだ記憶に新しい。無論「はじめてキーボードが内蔵されたNewton」というポジションにあったeMate 300も惜しまれながらもその生産と販売が中止された。 
もともとこのeMate 300は米国の初等教育市場向けをターゲットにした製品ということもあり、日本市場には並行輸入品が出回ったに留まった。しかしそのDNAはその後の初代シェル型iBookやiMacに踏襲されたことは確かである。 
その基本的な丸みを帯びたデザインはもとより、ボリカーボネート樹脂の使用やトランスルーセントの先駆けといったeMate 300のディテールはパーソナルコンピュータの筐体デザインとして新しい境地を開く先達であった。事実その深いグリーンの筐体を眺めていると光の加減よっては初代iMacのボンダイブルーの色味を思い出させる。 

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eMate 300はNewtonテクノロジーをもって開発された。しかし当時からこれがMac OSマシンであったなら...と多くの人たちが残念がったことも確かだった。米国の教育市場において好意的に迎えられたeMate 300ではあったが、時代背景を考えると悲運のマシンであったといえるのかも知れない。 
さて今回私がこのeMate 300を手にしたのは無論実用としてではない(笑)。そのプロダクトデザインの詳細をつぶさに確認し、Appleという「デザインも品質のうち」と考えてきた企業の歴史的な製品を再評価したいと考えたからに他ならない。また前記したようにこのeMate 300がその後のAppleプロダクトに影響を与えた仔細をも再確認したいと思った。 

■eMate 300のデザイン考 
 eMate 300はかなり特異なデザインにもかかわらず、最初に見たときにも違和感は感じなかった。まあ正直当時は「自分には縁がないマシン」と思っていたフシもあったが(笑)、実は同じシェル型といってもその後に登場した初代のiBookは嫌いだったので買わなかった(^_^)。 
eMate 300の外見は一般的なコンピュータ機器類とは違い、どこか有機的な匂いがする。三葉虫などを思い出させる甲殻類的ともいえるし、その補強用のリブは葉脈のようにも見えて亜熱帯植物の大きな葉のイメージにも似ている。 

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※eMate 300ケース表面から見えるリブ(上)と、裏面の文字通り葉脈のようなリブ(下)

しかしその濃いグリーンのトランスルーセントの筐体は写真でそのニュアンスを伝えるには大変難しいことを最初に記しておかなければならない。 
現在のアルミニウムで出来ているボディや、かつてのベージュカラーのようにどこから撮影しても均一のイメージで伝えられるものではなく、まさしく照明や光の当て方でそのイメージは大きく変わる。撮影の仕方で単なるプラスチック製の黒々とした筐体のようにも見えるし、上手に光を回すと突然それは妖しい様相を魅せるので難しい。 

eMate 300は子供が扱うことを前提にしたマシンだったから多少の乱暴な扱いを許す設計がなされていた。その大きなファクタとして壊れやすいハードディスクは内蔵されてなく、内蔵メモリやPCカードによる動作を前提にしていたことと衝撃に強いポリカーボネートの採用や葉脈のような補強用のリブが多用されている。また全体的に貝殻のような隆起が目立つ曲線を多用したデザインであり、その一見異様なデザインもよくよく観察すれば、強度を含めて子供の扱いを考慮したさまざまな工夫が見て取れる。 
早速目に付く部分から見てみよう。 

1.ハンドル
 ハンドルをつけたマシンは過去にもあったがeMate 300のそれはあくまで「重いから付けた」のではなく確実に持ち運べるようにと考慮されたものと思われる。実際に手にしてみると大人の手には少々小さいがハンドル内側には滑り止めのラバーが貼ってあるなど神経が行き届いている。ちなみに本体の重さは1.8Kgほどだ。

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2.スタイラスペン
 キーボードからテキスト入力は勿論可能だが、スタイラスペンで直接液晶画面に触れ絵を描くことができる。そしてスタイラスペンで手書き文字の認識が可能なことはさすがにNewtonである。このスタイラスペンは本体に収納されるが使用時には右利き左利き双方のユーザーを考慮し、ペン立てが左右に用意されている。
 
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3.液晶画面
 4bitグレースケール、ELバックライトの480×320ピクセルといった仕様。昨今の明るい液晶と比較すればかなり暗いが、フル充電で24時間以上連続使用できる。 

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4.キーボード
 テンキーはないがフルキーの上部にPowerキーと12個のファンクションキーがある。キートップはアップルロゴのコマンドキーやOptionキーなども含め、Macintoshユーザーなら何ら戸惑うことはないだろう。またファンクションキーはF1…F2…といったタイプではなく独自のアイコンを付した分かりやすいデザインとなっている。 
なおキーボードの後方には液晶の明るさとサウンド出力をコントロールするボリュームレバーがある。 

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5.インターフェース
 正面から見て左側面には電源コネクタとシリアルポートが、そしてハンドル脇にはIrDA赤外線端子が備わっている。また右側面にはPCカード(PCMCIA)スロットとオーディオ入出力端子がある。 

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※電源コネクタ、シリアルポートと赤外線端子部分(上)とPCカード(PCMCIA)スロットとオーディオ入出力端子部分(下)


6.その他
 背面は野外での利用を考え、カメラの三脚に固定できるようにネジ穴がある。また持ち主のネームカードを入れるスペースが背面中央に用意されている。 

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今回はあくまで筐体デザインとハードウェア周りを中心に紹介した。その25MHz ARM710a RISCプロセッサーによるNewtonOS 2.1の使い勝手などは私自身がまだよく把握していないからでもある。 
しかし1997年当時にこれだけの機能と装備を持ち、パソコンに接続でき、モデムを使ったFAXや電子メールのやりとりなどを可能としていたマシンが800ドルを切った価格で供給されていたことはある意味驚きではないだろうか。 
私自身Newton eMate 300というマシンはその一風変わったデザイン面から興味を持った。しかし実際膝の上に抱えてスイッチを入れるとそこにはNewtonは勿論だがMacintoshの技術に裏打ちされた数々のテクノロジーが見え隠れして面白い。 

なお余談だが、「AppleDesign」に掲載されているeMate 300と何か違うようだと実機を確認したところ、その写真はやはりプロトタイプのようであり、キーボードのファンクションキーが違うし実際の回路基板を配置した実機はあのように透けては見えないのである。念のため記しておきたい。 
次はまた機会を見て、ソフトウェア面などからの使い勝手をご紹介したいと思っている。 

銀座4丁目にいる天使に会ったことがありますか?

Apple Store Ginza に出向くとき、毎々微笑ましく気になるものがある。有楽町からマリオンを抜け晴海通りを銀座4丁目方向に進むと服部時計店の手前に天賞堂ビルがあるが、そこに天使がいる...。 


銀座にはさまざまなモニュメントがあるが、小さいながらもこれだけ印象的で微笑ましいものは他にはない。 
最初は「何で天使なのか?」とトマソンの類かとも思ったが、調べてみると比較的新しいモニュメントであった。 
晴海通りを通るとき、私たちはブロンズ製の羽根とお尻をこちらに向けた彼の後ろ姿に気づく。なぜならその姿は晴海通りと交差する道の向こうからくる人たちにいまにも愛の矢をいかけようとし、その顔を半分ビルの角から覗かせた姿のために晴海通り沿い側では後ろ姿なのである。だからきっと彼は後ろを通る貴方には気付いていないはずだ...(笑)。
 
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※銀座4丁目/銀座天賞堂ビルの角で、今にも愛の矢を射ろうと身構えている天使


初めて見たときには思わず駆け寄ってその顔をのぞき込んでしまったほどその姿形は可愛らしいが、実は彼は真剣である。 

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※小道側から晴海通りを眺めると、天使の覗いた顔と対面できるが、彼の顔は真剣である


彼が半身を隠しているビルは天賞堂といい、私らには高級ジュエリーショップという印象しかないが知る人ぞ知る高級鉄道模型の製造販売で世界的にその名を知られている会社である。ウェブによる会社案内によれば創業は明治12年、印刷業としてスタートしその後に輸入時計、蓄音機、レコード、貴金属等の販売を手がけて発展したという。 
戦後には現在の場所に移転して主に輸出用の高級鉄道模型の製造販売を開始し海外でよりその名を高めたというユニークな企業なのだ。 

私事ながら、若いころには今より頻繁に銀座を闊歩したはずだがこの天使君には気がつかなかった。しかしそれもそのはずで彼が生まれたのは1997年11月、ビルがリニューアルした際にお店の新しいシンボルとして誕生したからだ。したがって今年で彼は7歳になる...(^_^)。 

ではなぜ「天使」なのか。その理由の一端は「てんしょうどう」からの発想のようだが、まさしく天賞堂はブライダルジュエリーを扱っていることからしても同社のキューピッド役に違いない。 
Apple Store Ginzaに出向いた折りに、是非彼の愛の矢に射抜かれてみてはいかがだろうか...(笑)。 

銀座天賞堂


Apple 「Xgrid Preview 2」でクラスタリングを試す

私はAppleがプレビュー版として発表しているクラスタリング技術の「Xgrid」に期待している一人だ。本文に記す通り今年3月に来日した米AppleのWWRD担当副社長、ロン・オカモト氏にもXgridへの期待を伝えたが、今日は思いついたので「Xgrid Preview 2」を試してみた。


今年の3月11日、東京国際フォーラムにおいてアップル主催の「アップルデベロッパブリーフィング&QuickTimeモバイルコンテンツセミナー」が開催されたとき、来日した米AppleのWWRD担当副社長 ロン・オカモト氏にインタビューする機会を得た。
その模様はMac Fan誌(May 2004) 5月号の巻頭に掲載されたが、誌面の都合でかなりの部分は割愛されているので、まずはそのXgrid に関する部分のフルインタビューをご紹介してから実際に「Xgrid Preview 2」を試したレポートを見ていただこう...。

【松田】 個人的にXgridに大変期待しています。このクラスタリング技術を特別な市場向けとしてではなく一般ユーザー向けにサポートして欲しいと思っています。一台より二台、二台より三台の方が効率が上がるならクリエータやデザイナー、DTPなどの分野でも喜んでよりMacを買うでしょう(笑)。
現在Appleはβ版を独立したアプリケーションという形で提供していますが近い将来...Mac OS Xの一機能として組み込まれていくのでしょうか?。

【Okamoto】 あの、まず最初にクラスタリングの話をさせていただきたいと思います。あなたのお話のようにクラスタリング技術はある特定の市場セグメントだけでなく、非常に多くの分野で使われる可能性を秘めていると思います。
現在のβ版は、デベロッパーが試し・評価をしてどのようなソリューションが構築できるのかを見ていただくためのものです。

例えばいま私たちが提供しているXgrid、OS Xといったような...テクノロジーと、ハードウェア、例えばG5プロセッサとかPowerMac、XserveそれからXserve RAID、こうしたハードウェアをすべてひっくるめて見ていただくと、これまでのようにクライアントのみのアプリケーションではなくなっていると思います。

私たちRDの役割として、いまデベロッパーの方々がいま何を考え、どのような作業をしているかを考えた場合に明らかなことは、クラスタリングは非常に重要だということ。それからクラスタリングというのはデベロッパ自身に対してもコスト効果や効率の高い...パフォーマンスの高いソリューションとして必ずや活用すべきものだと思います。
そしてあの...(笑)ご質問(Mac OS Xの一機能として組み込まれるか)に関してですが、私からいまどのような方向性に行くというお話はできません(笑)。


…とまあ、こんなやり取りがあったわけだが、本来Xgridのターゲットは膨大な数値計算を高速で行うためのものであり、並列や分散といった高性能なコンピューティングを実現しようとするものだ。ただし、実際にXgridによるクラスタリング...すなわち複数台のコンピュータを連携させ、ひとつのシステムとして利用することで作業のスピードアップを図ることが容易にできるなら、そのテクノロジーは近い将来必ずや単に一部の研究機関や大学といった場所だけでなく、我々一般ユーザーをターゲットにすべきものとなるだろう。

なぜならロン・オカモト氏へのインタビュー時に発言したように、複数台を活用することで効率を上げることができるなら、これからますます高度な画像処理などが必要となる分野のクリエーターたちにとっても必要で現実的な技術だと考えるからだ。
無論これまでというか、現実に活用されているクラスタリング技術はパソコンユーザーが手軽に扱えるものではない。しかしXgridはまだプレビュー版ではあるものの、Appleらしい大変簡単な設定でクラスタリングが実現することが我々を刺激するわけだ。

■Xgridのインストール
では早速大変おおざっぱではあるが、2台のMacintoshを使ったXgridによるクラスタリングの実際を見てみよう。
まずXgridは現在Preview 2がここからダウンロードできる。そして対応OSはMac OS X 10.2.8以降とされており、CPUはG3, G4そしてG5のいずれにも対応している。
早速私はPower Mac G5 Dual 2GHz のマシンとPower Mac G4 867MHz (QuickSilver) の2台でXgridを試してみた。
まずダウンロードしたXgridを各マシンにそれぞれインストールする。インストールが完了するとアプリケーションフォルダに「Xgrid」と「Xgrid BLAST」のアプリケーションが、そしてシステム環境設定パネルにXgridアイコンが追加される。

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※インストールされたXgridのアプリたち(上)と「システム環境設定」に追加されたXgridアイコン(下)


■システム環境設定のXgrid設定
まず双方のシステム環境設定からXgridを起動し、そのダイアログから「Agent」タブの一番下にある「Choose when the agent may accept tasks:」を「Always」にする。

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※XgridダイアログのAgentタブ表示。「Xgrid agent service on」と現在サービスが稼働していることを示している


続いてこの「Xgrid agent service off」下の「Start」ボタンをクリックして起動させ、次に「Controller」タブの「Xgrid Controller service off」下のボタンもクリックしサービスをスタートさせる。

■Xgridアプリケーションの起動とクラスタリングの実際
次に一方のマシンのアプリケーションフォルダにインストールされた「Xgrid」を起動する。
ここで接続可能なMacintoshの一覧が表示されるが、具体的に記せばこのテスト例だとPower Mac G5 とPower Mac G4がリストアップされるはずだ。ここでアプリケーション側のMacintoshを選択すると「New Job」ウィンドウが表示しジョブ待ちとなり、その右側にはデモとして使えるいくつかのジョブタイプが表示される。

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※「New Job」ウィンドウ。右側には利用可能なジョブタイプがリストアップされている


この「New Job」ウィンドウのRendezvous 部分をダブルクリックすると、現在エージェントとして利用することができるMacintoshが表示されるが、そのStatusが Availableであれば問題なく動作していることになる。

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※「Cluster Nodes」ウィンドウには現在利用可能なマシンリストが表示される(上)。後述するように稼働させるとPowerBookアイコンにニュートンアイコン?が表示され、StatusがWorking表示となる(下)


取り急ぎ、「New Job」ウィンドウの「Mandelbrot」を選んで「OK」ボタンをクリックするとMandelbrotのフラクタル幾何学描写が始まり、別途CPUのクロックを示すタコメータが表示されるはずだ。このタコメータの単位は合計の周波数如何でその単位がMHzやGHzに自動的に変わる。実際にそのタコメーターの動きを見ると、その周波数のピークは約4.8GHzあたりを指す。無論これは動作させているマシン、すなわちG5 Dual 2GhzとG4 867MHzのCPU合計値であることは申し上げるまでもない。間違いなくXgridは動作しているのだ。

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※タコメータの周波数表示をご覧いただきたい


Appleらしいところは、ネットワーク上の利用可能なエージェントマシンを探すためにRendezvousネットワーク技術を利用している点だ。したがってユーザーは本来大変面倒になりがちなネットワーク設定を行わずにクラスタリング技術を活用できる。
しかし、現在のXgridによるプレビューは「クラスタリングでこのような可能性がありますよ」という事実を容易に見せてくれるためのデモンストレーションであり、一般ユーザーにとって実用レベルのものではないことは申し添えておく。

■結び
可能な限り単純に説明したつもりだが、Xgridの仕組みは作業を要求する「クライアント」、クライアントから指示のあった作業を配分する「コントローラ」そして現実に作業を推進する「エージェット」からなり、本来はそれぞれの存在意味を理解しておく必要がある。しかしこれまで見ていただいたように複数台のMacintoshのCPUパワーを結合する様を確認するだけならXgridはとても簡単にクラスタリングが可能になる。
米バージニア工科大学において1,100台のPower Mac G5とクラスタリング技術を用いて、世界で3番目に速いスーパーコンピュータを構築したというニュースは記憶に新しい。
1,100台はともかく、近い将来Xgridの技術が私らが予測・希望するようにMac OS X に統合される形になるなら、個人でも手近にある複数台のマシンを結合したコンピュータパワーを手軽に活用できるはずだ。
クラスタリング技術は、生命工学・地球環境シミュレーション・宇宙誕生を探るような分野だけに留まらずその規模はともかく、より我々の身近なものになってくるに違いない。


藤沢周平著「三屋清左衛門残日緑」に思う

季節柄、見るからにもの悲しい蝉の死骸があちらこちらに目立つ。蝉...セミの連想から藤沢周平の「蝉しぐれ」を思い出し、そして連想から書棚にあった「三屋清左衛門残日緑」を久しぶりに手に取った。泣いた...。 


最初に本書を読んだのは平成元年(1989年)だったと思う。その後1,2回は読み直したと思うがずっと忘れていた。連想とは面白いものだ。 

「日残りて昏るるに未だ遠し...」。時代は江戸時代、家督をゆずり隠居の身となった元用人の清左衛門。もっと悠々自適・浪々の日々を過ごせるかと思っていたが、いざ隠居となると開放感とは裏腹の世間から隔てられた寂しさと老いた身を襲う若い頃の悔恨...。しかし藩は紛糾の渦の中にあり、清左衛門を放ってはおかなかった...。 

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清左衛門が隠居したのは51歳のときのようだが、私はすでにその年齢を超えている。隠居ができる身分でも時代でもないから、自分ではまだまだ現役のつもりだ。しかし小説とはいえ、そして自分は用人を勤め終えた清左衛門のような器量を持っているとは考えていないものの、50を過ぎたひとりの男の生きざまがこの歳になって読み返すと怖いほどよく分かる。 
仕事のこと、出世のこと、恋や友人たちのことなど、時代は違っても清左衛門の生きざまの中に我が身を置いてもそんなに不自然ではない歳になったと言うことなのだろうか。 

いつの世も人は出世を願い、地位を求めて争い苦悩する。しかしある年齢になるとフトそんなことはどうでもよいことに思え、数十年もの永きに渡った仕事漬けの日々がほんの一瞬であったことのようにも思えてくる。「光陰、矢の如し」とはよく言ったものである。 
その中には楽しい思い出もあるものの、思い出す度に怒り涙することもあり、後悔の念がふつふつと湧いてくることもある。 
無論「三屋清左衛門残日緑」は小説であるが、その人間模様が大変よく描かれているので自然とその心地よい藤沢ワールドに引き込まれていく...。 
ところで「三屋清左衛門残日緑」を一通り読み直しつつまたまた思い出した事がある。いつの頃であったかは忘れたがNHKの金曜時代劇とかで連続ドラマとして放映されたものをいくつかビデオ録画したはずだと早速探し出してその数編を恥ずかしながら顔をくしゃくしゃにしながら観た...。 

主役の清左衛門役である仲代達也は無論だが、佐伯熊太役の財津一郎の演技が絶品である。お互いの立場を尊重しながら、ガキのころからの友達として日々仲間を気遣うオヤジたちの心が虚構の世界とはいえ大変嬉しくなってくる。また登場人物たちの今では忘れ去られた感もあるダンディズムが心地よい。そして嫁の里江や「涌井」のおかみのみさなどが、清左衛門たち男の人生に艶を与えてくれる。 
「蝉しぐれ」もそうだが「三屋清左衛門残日緑」は名作である。 
夏休みのひととき、もし時代ものに興味のある方はご一読をお勧めする。まあ、すでに多くの方がお読みになっているとは思うが...。 

■藤沢周平著「三屋清左衛門残日緑」文藝春秋社刊(1989年9月20日第一刷) 
 ISBN 4-16-311200-6 

音楽は良い環境で、そして良い音で聴きたいと誰しもが思うに違いない。しかし現実問題として室内外を問わず、私たちの周りは騒音に充ち満ちている。私は2001年にBOSE社のノイズキャンセリング・ヘッドフォン「QuietComfort」を手に入れたことがあったが、今回はその新型のレポートだ。


■QuietComfort 2(クワイアットコンフォート2)とは
「QuietComfort 2」の外見は一般の密閉型ヘッドセットと変わったところはない。しかしその使われているテクノロジーは通常の密閉型のそれとは大きく異なる。
「QuietComfort」のコンセプトを一言でいうなら「必要な音を聴くために、周りの音を消す」という発想である。
いうまでもなく私たちは常に騒音のまっただ中で生活している。ただ私たちの聴覚はよくできており、目的の事に集中するとその他の騒音・雑音は気にならなくなるという性格を持っている。だからこそ毎日多くの騒音の中でもそうそうストレスなく生活ができるわけだ。したがって何かの機会があり、街中の様子を録音してそれをプレイバックすると「こんなにうるさかった?」と驚く経験をする。とはいえ、音楽を理想的な状態で聴きたいとなると話は違ってくる。
いくならんでも我々は聴きたい音だけを選択して聴く能力は持っていないから、例えば電車の中で騒音が気になるときはイヤーフォンやヘッドセットのボリュームを上げることになる。しかしこれでは難聴を作り出すようなもので決して耳によい事ではない。

BOSE社はいわずと知れた音響機器の世界的なメーカーでありその製品のクオリティには定評がある。
BOSE社は1978年からヘッドセットの基本研究に着手し、米軍をはじめとする航空機産業向けに製品を納めてきた。そして1995年には米国飛行機所有者・パイロット協会より€"Product of the year€"を受賞し1996年にBOSE社初の一般向けアクティブ・ノイズ・キャンセリング・ヘッドセットをアメリカン航空のアッパークラス専用のヘッドセットとして納入実績を果たしたという。

民間のプロパイロットは勿論、空軍パイロットや飛行場などで働く人たちにとって騒音を軽減し的確で正確なコミュニケーションを行うことは重要なことであると同時に非常に高いレベルの騒音下に置かれるために聴覚を守る必要もある。したがってすでに20年以上にも及ぶ研究・開発の成果が「QuietComfort 2」なのだ。

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※BOSE「QuietComfort 2」のソフトケース(上)と、その同梱品(下)


さて「QuietComfort」は別に飛行機や新幹線の中だけでなく、日常の自宅でも純粋にリラックスして音楽を聴きたい場合に効果を発揮する。
先にも記したように私たちの聴覚は聞こえている騒音を感じさせないようにする感知抑制機能を持っているが長時間そうした抑制努力を続けていると大きな疲労の原因となるという。また「QuietComfort 2」自体、他のオープンタイプのヘッドフォンと違って音漏れが少ないため、周りに迷惑をかけることもなく必要なボリュームで音楽や他のソース(英会話の勉強など)に集中できる。
ところで製品名「QuietComfort」の「Quiet」は静けさ、「Comfort」は快適さという意味だから、そのまんまじゃん(笑)。

■QuietComfort 2 〜ノイズキャンセリングの仕組み
通常のヘッドフォンは当然の事だがヘッドセットを通して周りの騒音も耳に達し、一般的な密閉型でも騒音は多少軽減されるもののそれには限界がある。
さてノイズキャンセリングの仕組みだが、まず「QuietComfort 2」はイヤーカップの中に装備されているマイクロフォンでカップの中のすべての音をリアルタイムにモニターする。そして聴こうとする音楽ソースと比較しその差を騒音としてとらえ、それと正反対の位相を持つアンチ・ノイズ信号を作りだして音楽などの聴こうとする信号と一緒にイヤーカップ内のスピーカーに送り出す仕組みである。

その結果、ノイズ信号とアンチ・ノイズ信号はお互いにうち消し合って私たちの耳には聴こうとする音楽だけが伝わるということになる。実際にはこうしたプロセスを高速で繰り返し変化を続けるノイズにリアルタイムに対応し処理し続ける。ただし無音の状態になるわけではなく、安全性などを考えて人の話し声などの帯域はキャンセルしない。

■QuietComfort 2の仕様とQuietComfortとの違い
以前の「QuietComfort」より「QuietComfort 2」の方がそのイヤーカップのデザインが一段とスマートになった。またイヤーカップ部分が90度回転でき、本体をフラットに収納することができるようになったことも携帯時には嬉しい。

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※2000年発売の「QuietComfort」(上)と2003年発売の「QuietComfort 2」(下)


以前の製品との一番の違いはバッテリーパック部分が無くなり、バッテリーはイヤーカップの中に収まるように設計された点にある。
実は「QuietComfort」最大の欠点がこれだった。このバッテリーパック部分が実際の使用時にかなり邪魔だったのだ。
さらに取り外しが可能な片出し型ケーブルの採用により、音源と接続せずにノイズキャンセリング機能のみを使うときにはコードレス...すなわちヘッドセットのみで利用できるようになった。ただし「QuietComfort」はバッテリーをOFFにすることができたが、「QuietComfort 2」はスイッチを切るとノイズキャンセリングが利かないのは当然だが、音楽ソースと接続しての利用もできなくなる。すなわちノイズキャンセリング効果を使わないで音楽ソースを聴くという機能はなくなった。なおバッテリーは単4アルカリ乾電池1本で約35時間使えるという。

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※「QuietComfort」のバッテリーパック(上)と「QuietComfort 2」のバッテリー装着部分(下)


■QuietComfort 2の感想
肝心のノイズキャンセリング機能だが、確かに民生用の製品では「QuietComfort 2」が一番優れていると思う。以前に国産メーカーの製品を使ったことがあったが個人的にはそれよりずっと良いと思っている。まあ価格もまったく違うのだが...(笑)。
さて実際に「QuietComfort 2」を使ってみた感想を述べたい。

テストというほど大げさではないが、比較として一般的な密閉型ヘッドフォンと比較をしてみた。部屋は2台のPower Macintoshが起動し、ウィンドウ型のエアコンが唸りを上げている。そこにAMラジオ放送を流し、かつ1メートルほど離れたところに携帯電話を置き、そこに電話をかけてみるといった実験をしてみた。ただしヘッドフォンに音楽はまだ流さない状態である。
まず一般的な密閉型ヘッドフォンを装着するとマシンのファンの音は軽減されるような気がするものの、エアコンの音はイヤーカップに反響し、その音域が多少変わるが軽減された感じはしない。ラジオのパーソナリティの声もよく聞こえるし電話の音も聞こえる。ここで音楽を流せばそのボリュームで他の音が聞こえづらくなる程度だ。したがってもしノイズが大きいとソースのボリュームを上げざるを得なくなり、耳に悪いばかりか疲れる原因にもなる。

次に電源を入れた「QuietComfort 2」を音楽を流さず同じように装着してみた。
その瞬間、まったく違う世界に入った感じだ。まずマシンのファンといった音は聞こえない。ただしエアコンの唸りは大きく軽減されているものの、ラジオからの人の声はまずまず聞こえるのが面白い。また携帯電話が鳴ってもその着メロに集中しないと分からない。無論その音量にもよるのだろうが...。
ここでiPodから音楽を流してみると、エアコンの唸りはほとんど気にならなくなるし他の音らしきものは聞こえない…。

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※「QuietComfort 2」のスイッチはイヤーカップ右にある


ところでその音質だが一般的にこの種の製品は通常の同じスペック製品と比較して音質は犠牲になる傾向があるがこの「QuietComfort 2」はとても良いのではないか...。iPod mini付属のイヤーフォンと比較すると構造上の違いもあるわけだが、音のバランスや臨場感は格段に「QuietComfort 2」の方がよい。
ただ面白いのは通常マニュアルなどに記述のある周波数特性などというデータ記述が「QuietComfort 2」にはないことだ。これは先に説明したノイズキャンセリングの働き、すなわちノイズの状態などによりその特性は変化せざるを得ない。このためあらかじめ定めた通りのスペックが持続できないことが理由なのではないだろうか。
ともあれ実際に音をモニターしてみると音の抜け、高低音のクリアさは以前の製品よりずっと良くなっている感じがする。

また外観の感想を記すなら、そのカップの大きさも一般の同種のタイプと比べて大きくはない。作り、材質ともに見るからに良いものを使っているので現実に装着感も大変よい。
ただし「QuietComfort 2」は街中で歩きながら使うと安全性に問題があるので十分注意をする必要があるだろう。特に車の音をはじめとして周りの音を消してしまうので、運転時などには決して使ってはならない。そして歩いている時でも周りの状況をよく把握していないと危険な場合があるので承知しておくべきだ。
さらに「QuietComfort 2」は音楽を聴くだけでなく「静かな場を欲しい」といった時にも活用したい。例えば仕事で集中したいとき、あるいは本を読みたいときなどは効果絶大である。もしかしたらこちらの需要の方も大きくなるのではないだろうか。

■エピローグ
あらためて今回「QuietComfort 2」を使ってみて感じたが、「ノイズを軽減して音楽を純粋に楽しく聴く」ことは勿論、瞬時に理想に近い環境(音だけに関してだが)を作り出してくれると考えればその価格も納得せざるを得ないのではないか。
事実「QuietComfort 2」は読書をするとき、仮眠をするときなどにもケーブルを外してヘッドセットだけで使うこともできるわけで、掃除機や洗濯機の音、猫の鳴き声、窓から入ってくる車の音などを遮断してくれる。
私自身、自宅のマッサージチェアにふんぞり返りながらこれを使うと短時間で失神できる(笑)。
さて、冒頭に記したように2001年に最初の「QuietComfort」を使い始めたとき、私の周りの反応は「なに...それ?」といった感じで鈍かった(^_^;)。しかしいまではApple Store GinzaのiPodあるいはiPod miniの試聴コーナーにはこの「QuietComfort 2」がずらりと並んでいるのを見ると隔世の感がある。

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※現在のApple Store Ginza店頭


確かに「QuietComfort 2」は決して安くなくそしてまた市場にはノイズキャンセリングを唱える安価な製品も登場しているから選択は迷うに違いない...。しかし単なるヘッドフォンを購入するというより「本物の快適さを求める」ことを追求するなら、自ずと選択はこの「QuietComfort 2」に向かうのではないだろうか。

●ボーズ株式会社

●Apple Store


極上の静けさを携帯する 〜 BOSE「QuietComfort 2」

音楽は良い環境で、そして良い音で聴きたいと誰しもが思うに違いない。しかし現実問題として室内外を問わず、私たちの周りは騒音に充ち満ちている。私は2001年にBOSE社のノイズキャンセリング・ヘッドフォン「QuietComfort」を手に入れたことがあったが、今回はその新型のレポートだ。


■QuietComfort 2(クワイアットコンフォート2)とは
「QuietComfort 2」の外見は一般の密閉型ヘッドセットと変わったところはない。しかしその使われているテクノロジーは通常の密閉型のそれとは大きく異なる。
「QuietComfort」のコンセプトを一言でいうなら「必要な音を聴くために、周りの音を消す」という発想である。
いうまでもなく私たちは常に騒音のまっただ中で生活している。ただ私たちの聴覚はよくできており、目的の事に集中するとその他の騒音・雑音は気にならなくなるという性格を持っている。だからこそ毎日多くの騒音の中でもそうそうストレスなく生活ができるわけだ。したがって何かの機会があり、街中の様子を録音してそれをプレイバックすると「こんなにうるさかった?」と驚く経験をする。とはいえ、音楽を理想的な状態で聴きたいとなると話は違ってくる。
いくならんでも我々は聴きたい音だけを選択して聴く能力は持っていないから、例えば電車の中で騒音が気になるときはイヤーフォンやヘッドセットのボリュームを上げることになる。しかしこれでは難聴を作り出すようなもので決して耳によい事ではない。

BOSE社はいわずと知れた音響機器の世界的なメーカーでありその製品のクオリティには定評がある。
BOSE社は1978年からヘッドセットの基本研究に着手し、米軍をはじめとする航空機産業向けに製品を納めてきた。そして1995年には米国飛行機所有者・パイロット協会より€"Product of the year€"を受賞し1996年にBOSE社初の一般向けアクティブ・ノイズ・キャンセリング・ヘッドセットをアメリカン航空のアッパークラス専用のヘッドセットとして納入実績を果たしたという。

民間のプロパイロットは勿論、空軍パイロットや飛行場などで働く人たちにとって騒音を軽減し的確で正確なコミュニケーションを行うことは重要なことであると同時に非常に高いレベルの騒音下に置かれるために聴覚を守る必要もある。したがってすでに20年以上にも及ぶ研究・開発の成果が「QuietComfort 2」なのだ。

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※BOSE「QuietComfort 2」のソフトケース(上)と、その同梱品(下)


さて「QuietComfort」は別に飛行機や新幹線の中だけでなく、日常の自宅でも純粋にリラックスして音楽を聴きたい場合に効果を発揮する。
先にも記したように私たちの聴覚は聞こえている騒音を感じさせないようにする感知抑制機能を持っているが長時間そうした抑制努力を続けていると大きな疲労の原因となるという。また「QuietComfort 2」自体、他のオープンタイプのヘッドフォンと違って音漏れが少ないため、周りに迷惑をかけることもなく必要なボリュームで音楽や他のソース(英会話の勉強など)に集中できる。
ところで製品名「QuietComfort」の「Quiet」は静けさ、「Comfort」は快適さという意味だから、そのまんまじゃん(笑)。

■QuietComfort 2 〜ノイズキャンセリングの仕組み
通常のヘッドフォンは当然の事だがヘッドセットを通して周りの騒音も耳に達し、一般的な密閉型でも騒音は多少軽減されるもののそれには限界がある。
さてノイズキャンセリングの仕組みだが、まず「QuietComfort 2」はイヤーカップの中に装備されているマイクロフォンでカップの中のすべての音をリアルタイムにモニターする。そして聴こうとする音楽ソースと比較しその差を騒音としてとらえ、それと正反対の位相を持つアンチ・ノイズ信号を作りだして音楽などの聴こうとする信号と一緒にイヤーカップ内のスピーカーに送り出す仕組みである。

その結果、ノイズ信号とアンチ・ノイズ信号はお互いにうち消し合って私たちの耳には聴こうとする音楽だけが伝わるということになる。実際にはこうしたプロセスを高速で繰り返し変化を続けるノイズにリアルタイムに対応し処理し続ける。ただし無音の状態になるわけではなく、安全性などを考えて人の話し声などの帯域はキャンセルしない。

■QuietComfort 2の仕様とQuietComfortとの違い
以前の「QuietComfort」より「QuietComfort 2」の方がそのイヤーカップのデザインが一段とスマートになった。またイヤーカップ部分が90度回転でき、本体をフラットに収納することができるようになったことも携帯時には嬉しい。

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※2000年発売の「QuietComfort」(上)と2003年発売の「QuietComfort 2」(下)


以前の製品との一番の違いはバッテリーパック部分が無くなり、バッテリーはイヤーカップの中に収まるように設計された点にある。
実は「QuietComfort」最大の欠点がこれだった。このバッテリーパック部分が実際の使用時にかなり邪魔だったのだ。
さらに取り外しが可能な片出し型ケーブルの採用により、音源と接続せずにノイズキャンセリング機能のみを使うときにはコードレス...すなわちヘッドセットのみで利用できるようになった。ただし「QuietComfort」はバッテリーをOFFにすることができたが、「QuietComfort 2」はスイッチを切るとノイズキャンセリングが利かないのは当然だが、音楽ソースと接続しての利用もできなくなる。すなわちノイズキャンセリング効果を使わないで音楽ソースを聴くという機能はなくなった。なおバッテリーは単4アルカリ乾電池1本で約35時間使えるという。

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※「QuietComfort」のバッテリーパック(上)と「QuietComfort 2」のバッテリー装着部分(下)


■QuietComfort 2の感想
肝心のノイズキャンセリング機能だが、確かに民生用の製品では「QuietComfort 2」が一番優れていると思う。以前に国産メーカーの製品を使ったことがあったが個人的にはそれよりずっと良いと思っている。まあ価格もまったく違うのだが...(笑)。
さて実際に「QuietComfort 2」を使ってみた感想を述べたい。

テストというほど大げさではないが、比較として一般的な密閉型ヘッドフォンと比較をしてみた。部屋は2台のPower Macintoshが起動し、ウィンドウ型のエアコンが唸りを上げている。そこにAMラジオ放送を流し、かつ1メートルほど離れたところに携帯電話を置き、そこに電話をかけてみるといった実験をしてみた。ただしヘッドフォンに音楽はまだ流さない状態である。
まず一般的な密閉型ヘッドフォンを装着するとマシンのファンの音は軽減されるような気がするものの、エアコンの音はイヤーカップに反響し、その音域が多少変わるが軽減された感じはしない。ラジオのパーソナリティの声もよく聞こえるし電話の音も聞こえる。ここで音楽を流せばそのボリュームで他の音が聞こえづらくなる程度だ。したがってもしノイズが大きいとソースのボリュームを上げざるを得なくなり、耳に悪いばかりか疲れる原因にもなる。

次に電源を入れた「QuietComfort 2」を音楽を流さず同じように装着してみた。
その瞬間、まったく違う世界に入った感じだ。まずマシンのファンといった音は聞こえない。ただしエアコンの唸りは大きく軽減されているものの、ラジオからの人の声はまずまず聞こえるのが面白い。また携帯電話が鳴ってもその着メロに集中しないと分からない。無論その音量にもよるのだろうが...。
ここでiPodから音楽を流してみると、エアコンの唸りはほとんど気にならなくなるし他の音らしきものは聞こえない…。

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※「QuietComfort 2」のスイッチはイヤーカップ右にある


ところでその音質だが一般的にこの種の製品は通常の同じスペック製品と比較して音質は犠牲になる傾向があるがこの「QuietComfort 2」はとても良いのではないか...。iPod mini付属のイヤーフォンと比較すると構造上の違いもあるわけだが、音のバランスや臨場感は格段に「QuietComfort 2」の方がよい。
ただ面白いのは通常マニュアルなどに記述のある周波数特性などというデータ記述が「QuietComfort 2」にはないことだ。これは先に説明したノイズキャンセリングの働き、すなわちノイズの状態などによりその特性は変化せざるを得ない。このためあらかじめ定めた通りのスペックが持続できないことが理由なのではないだろうか。
ともあれ実際に音をモニターしてみると音の抜け、高低音のクリアさは以前の製品よりずっと良くなっている感じがする。

また外観の感想を記すなら、そのカップの大きさも一般の同種のタイプと比べて大きくはない。作り、材質ともに見るからに良いものを使っているので現実に装着感も大変よい。
ただし「QuietComfort 2」は街中で歩きながら使うと安全性に問題があるので十分注意をする必要があるだろう。特に車の音をはじめとして周りの音を消してしまうので、運転時などには決して使ってはならない。そして歩いている時でも周りの状況をよく把握していないと危険な場合があるので承知しておくべきだ。
さらに「QuietComfort 2」は音楽を聴くだけでなく「静かな場を欲しい」といった時にも活用したい。例えば仕事で集中したいとき、あるいは本を読みたいときなどは効果絶大である。もしかしたらこちらの需要の方も大きくなるのではないだろうか。

■エピローグ
あらためて今回「QuietComfort 2」を使ってみて感じたが、「ノイズを軽減して音楽を純粋に楽しく聴く」ことは勿論、瞬時に理想に近い環境(音だけに関してだが)を作り出してくれると考えればその価格も納得せざるを得ないのではないか。
事実「QuietComfort 2」は読書をするとき、仮眠をするときなどにもケーブルを外してヘッドセットだけで使うこともできるわけで、掃除機や洗濯機の音、猫の鳴き声、窓から入ってくる車の音などを遮断してくれる。
私自身、自宅のマッサージチェアにふんぞり返りながらこれを使うと短時間で失神できる(笑)。
さて、冒頭に記したように2001年に最初の「QuietComfort」を使い始めたとき、私の周りの反応は「なに...それ?」といった感じで鈍かった(^_^;)。しかしいまではApple Store GinzaのiPodあるいはiPod miniの試聴コーナーにはこの「QuietComfort 2」がずらりと並んでいるのを見ると隔世の感がある。

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※現在のApple Store Ginza店頭


確かに「QuietComfort 2」は決して安くなくそしてまた市場にはノイズキャンセリングを唱える安価な製品も登場しているから選択は迷うに違いない...。しかし単なるヘッドフォンを購入するというより「本物の快適さを求める」ことを追求するなら、自ずと選択はこの「QuietComfort 2」に向かうのではないだろうか。

●ボーズ株式会社

●Apple Store


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Author:appletechlab

主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。マネキン造形研究中。日本シャーロック・ホームズクラブ会員。日本リュート協会会員。ゆうMUG会員