iPhone登場10周年に寄せて

先日の2017年1月9日はiPhoneが発表されてからちょうど10年となる日。つきなみだが長いようでもあり一瞬のことだったようにも思えるが、iPhone成功の秘密をあらためて当時に立ち帰って眺めてみるとなかなかに面白い。私自身は日本では発売されなかった初代 iPhoneの情報に接したとき本当に心がときめいたものだ。


ということで今回は当時そのiPhoneに関して書いた記事を読み返しながらどんな反応があったのかを振り返ってみたい。なおここでご紹介するアーティクルは現在でも当時のまま、お読みいただくことができる。

私がニュース記事を別にして、iPhoneに関する記事を当Macテクノロジー研究所ブログに掲載した最初は発表から2日経った2007年1月11日だった。それは「Apple iPhoneの素直な印象~写真だけではその凄さは分からない!」と題した記事だったが、自身まだ実機を手にしてはいなかったし「iPhoneの凄さは一般的なウェブサイトのニュースなどで、その紹介されたスペックを追っても実態は分からないのではないか」としながらも「iPhoneと現在我々が手にしている携帯電話を比べて見ると、スペック以上にその違いがよく分かると同時に、iPhoneの素晴らしさが理解できると思う。そして『なぜ、iPhoneの機能の一部でもいいから、使いやすく魅力的な製品がこれまで出来なかったのか…』を思い、Appleという企業の特殊性と技術力の高さをあらためて痛感した」と書いている。

そして「現在のiPodがそうであるように、街中で…電車の中で…人々が集まるとき、iPhoneを使う多くの人たちとすれ違うようになることを夢見つつ、じっくりと情報を集めながら待つことにしようではないか」と結んでいるのが我ながら興味深い。

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※初代iPhone (当研究所所有)

続いて1月24日に「『iPhone』にも酷評があるようだが...いつものことだ!」と題した記事を掲載した。
これはiPhone発表を受けて世界中のメディアがその反応を挙げ始めたからである。そうした中には意味のないべた褒めの記事もあったが、見るからに情報を精査していない否定的な意見も多かったことを思い出す。
当時の原稿をお読みいただければお分かりの通り、私自身は iPhoneに関して大いに賞賛を惜しまない一人だったが、アナリストの一部や業界関係者、専門家と称する人たちの中には様々な酷評を唱える人もいた。
例えば「iPhoneの技術は目新しいものではない」という批評は大いに笑えた。そして確かマイクロソフトのお偉いさんの「500ドルもするバカ高い携帯など誰が買うか?」といった批判もいまだに記憶に残っている。

特に「iPhoneの技術は目新しいものではない」だから「一週間で飽きる」といった批判を繰り返す人たちはそもそもテクノロジーの進化・進歩とはどういうことかを理解していない。いみじくもスティーブ・ジョブズは発表時にiPhoneを「携帯電話の再発明」といったが、いま思えばかなり控えめないい方だったとも思える。
ともあれ個人的にはこのiPhoneのニュースに接した際、前記アーティクルの本文にもあるとおり、スティーブ・ジョブズがあのゼロックス・パロアルト研究所(PARC)を訪れ、Lisa開発のヒントを得たという歴史的現実が甦ってくる。

それは例えiPhoneに採用されているテクノロジーの一部が、過去に存在していたとしても、誰もそうしたものを活かすすべを知らなかったことを証明しているともいえる。
「iPhoneの技術は目新しいものではない」というのなら、なぜA社もB社も、そしてC社からも1970年代からの30年間、iPhoneに匹敵するエキサイティングな製品をただの一度も出せなかったのか。メーカー各社はこれまで何をやっていたのか…少しは反省して欲しいと思う…」と書いているが、残念ながらその思いはいまだほとんど変わっていない。

その後、iPhone 3Gが登場した後でも国内メーカーやキャリアの代表者たちがさまざまな発言を繰り返していたが、iPhone 3Gと比較して自社製品のデキの悪さを認識していないのが笑えた。なぜ iPhone 3Gの登場に多くの人たちがこれだけ騒ぐのか、それは一昔前とは違い ”彼ら彼女らがアップルフリークだから” ではなく、iPhone 3Gにそれだけの魅力を感じる様々な要因があるからだ。

ましてや…とある企業の代表者が自社新機種リリースの際に「これでiPhone独壇場の時代は終わった」などと発言するに至っては身内へのリップサービスだとしても状況判断がきちんとなされていないことを暴露しているとしか思えなかった。そして「iPhone 3Gに対抗してタッチパネルを採用すればそれで勝てると思っているのであれば返す言葉もない」と書いたが…結果10年経った現状は申し上げるまでもない…。

iPhoneの優れた利便性は決してiPhone本体だけから生まれたものではないことも再認識すべきだろう。iTunesやMobile Me(当時)の存在、App Storeなどなどデバイスの使い勝手を最大限に生かす努力をAppleは独自で切り開いてきたのだ。
残念ながら他のキャリアやメーカーが一夜にして同等な魅力ある環境を作り出すことは無理なのである。
さて、そのiPhoneも勢いが鈍化したという情報もあるもののAppleが余程のヘマをしない限りスマートフォン市場において世界市場での優位を続けることは間違いないだろう。

【参考】
初代 iPhoneは2007年1月9日に開催されたMacworld ExpoにてAppleのCEO スティーブ・ジョブズにより「携帯電話の再発明」と発表された。同社デジタルオーディオプレーヤーのiPod、携帯電話、インターネットや電子メールの送受信等が行えるという3つの機能を併せ持ち、マルチタッチスクリーンによる操作性を謳った携帯情報端末。
カラーはシルバーのみで、発売当初は容量4GBと8GBの2通りだったが後に16GBモデルがリリースされる。
発売は同年6月29日よりアメリカ合衆国にて発売されたが通信方式にGSMを採用していない日本などでは発売されていないため、iPhone 1st Generationは染みが薄い。しかし本機はまぎれもなくAppleのその後の命運を左右するにふさわしい記念すべき製品である。



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主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。マネキン造形研究中。日本シャーロック・ホームズクラブ会員。日本リュート協会会員。ゆうMUG会員