家庭向け音声アシスタントデバイスGoogle Homeの実力〜実用編

Google Homeとはどのようなデバイスなのか。Siriとはどこがどのように違うのか。本当に役に立つのか…などなどを知りたいと手元に置き、一週間ほど日々付き合ってきた感想をご報告したい。とはいっても前回の準備編で述べた通り、個人的にはスマートホームを完備する予定はないしTVと連動させるつもりもない。ただただ調べ物にどれほど活用できるかを知りたかった。


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やはり興味の第一は音声で何かを検索するという点においてSiriとどれほど違うのかという点だった。
そうした違いを明確にするには双方に同じ質問をしてみるのが1番である。ということで早速いくつかの問いをGoogle HomeとSiriにぶつけてみた。
なおSiriはmacOS Sierra 10.12.6によるものだ。

■「享保七年は西暦で何年?」
 時代小説を書いているのでこの種のことを多々確認する機会がある。

 ・Google Home
「すみません、よくわかりません」

 ・Siri
「Webで"享保7年は西暦で何年"に関する情報が見つかりました:」と答えてWebサイトのリストを表示。

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■「享保の改革とは?」
 ・Google Home
 「Wikipediaのサイトからの概要です。享保の改革は、江戸時代中期に初代征夷大将軍将軍吉宗によって主導された幕政改革。名称は吉宗が将軍位を継いだ時の年号である享保に由来する。江戸時代後期には享保の改革に倣って、寛政の改革や天保の改革が行われ、これら3つを指して『江戸時代の三大改革』と呼ぶのが史学上の慣例となっている」



※Google Homeによる実際の受け答えと音声イントネーションの紹介

 ・Siri
 「こちらをご覧下さい」と答えてWikipediaによる記事の概要を表示する。

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■「水野忠邦の誕生日は?」
 ・Google Home
 「1794年7月19日です」

 ・Siri
 「水野忠邦の誕生日は1794年7月19日です」と答えてWikipediaによる記事の概要を表示する。

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■「明日は傘が必要かな?」
 ・Google Home
 「はい、多摩の明日の天気は、17度、雨で、時々やむでしょう」

 ・Siri
 「はい、明日は雨になるでしょう」と答えて天気概要と週間天気を表示する。

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■「埼玉県川口駅前の地図を見せて」
 ・Google Home
 「すみません、よくわかりません」

 ・Siri
 「こちらが川口市です」と答えてマップを表示。

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■「最新のニュースは」
 ・Google Home
  「最新のニュースをお知らせします」と答え、NHKのラジオニュースを再生する。

 ・Siri
 「Webで"最新のニュース"に関する情報が見つかりました」と答え、Web検索のトップヒットやWebサイトのニュースサイト一覧を表示する。

■「ライオンの鳴き声は?」

 ・Google Home
 「こちらがライオンです。ガウゥゥゥゥ…」 

 ・Siri
 「”ライオンの鳴き声”に関するこちらの情報がWebで見つかりました」と答えてYouTubeなどへのリンク情報を表示する。

■「なにか歌って」
 ・Google Home
 「では、行きます!ラララララララララ」と音階を歌う

 ・Siri
 「歌ですね。分かりました。」と答え「いろはにほへと ちりぬるを わかよたれそ つねならむ うゐのおくやまけふこえて あさきゆめみし ゑいもせす」と歌いそれをダイアログで示す。

■「早口言葉を言ってくれる?」
 ・Google Home
 「早口言葉ですね、わかりました。孫が、ままごと孫が、ままごと孫がままごと孫がままごと」

 ・Siri
 「はい、やってみます:赤巻紙青巻紙黄巻紙…あ、間違えました。」

■「ちあきなおみの歌を聴かせて」
 ・Google Home
 「Play Musicでちあきなおみのラジオミックスを再生します」と答え、曲を流してくれる。

 ・Siri
  iTunesのライブラリに入っていれば曲を再生してくれる。

以上、両者の違いを明確にするために同じ問いをGoogle HomeとSiriにした結果を列記した。
無論両者共に問いによって答えの仕方や内容が違ってくることがあるのはご承知の通りである。
両者の答えを比較して一目瞭然なのはGoogle Homeは当然のことだが、すべて音声で終始することを目指していることだ。

誕生日を聞けば声で「何年何月何日です」と答える。「最新のニュース」と聞けば提携している最新のラジオニュースの録音を再生するといった具合だ。
また「ライオンの鳴き声は」と聞けばSiriだと声を聞くことができるYouTube等のリンク情報を表示するが、Google Homeは直接ライオンのうなり声が響く。
反面当然のことだが、一覧の「地図を見せて」はGoogle Homeに向かって適切な問いではない。単体では表示のしようがないからで答えは「すみません、よくわかりません」となる。

対してSiriはデスクトップパソコンのmacOS Sierraによるものを使っていることもあり、音声の受け答えの後で必ずといってよいがダイアログを表示し、Wikipediaや関連するWeb情報へのアクセスをサポートしてくれる。
要はバックグランドというかコンセプト自体がかなり違うわけでその優劣はユーザーがマシンの答えをどのように活用・利用するかにかかってくる。

例えば上記の例で言えば天気を問いかけ、それに答えてくれる内容を聞いて目的が達成できればGoogle Homeで問題はない。しかしその問いが「享保の改革とは?」と問うたとき、「Wikipediaのサイトからの概要です。享保の改革は、江戸時代中期に初代征夷大将軍将軍吉宗によって主導された幕政改革。名称は吉宗が将軍位を継いだ時の年号である享保に由来する。江戸時代後期には享保の改革に倣って、寛政の改革や天保の改革が行われ、これら3つを指して『江戸時代の三大改革』と呼ぶのが史学上の慣例となっている」とすらすら答えられたところでメモすることはできず、重要な点を聞き逃すかも知れない。
※後述するマイアクティビティに記録されるが※

その点、SiriであればWikipediaなりにアクセスできるため、テキストとして二次利用するには最適だ。
逆になにかをやりながら最新ニュースを耳にするといった事を求めるならそれはSiriよりGoogle Homeの方が適していることになる。

なおGoogle Homeのコミュニケーションは女性の声だが、Siriも女性の声で使っている。どちらがより自然な話し方かといえばSiriはmacOS Sierraになって良くはなったが現時点では若干Google Homeの方がイントネーションは自然だ。

あと、この種のデバイスを使うとなると気になるのが個人情報のセキュリティ面だ。こうした点になるとGoogle HomeだけではないがGoogleはサービス全体において気になる面があるのは否めない。
Google HomeはiPhoneの専用ソフト「Google Home」のマイアクティビティで自分が命じた内容とその答えを日付毎にリストアップし保存されているのを確認できる(消去は可能)。無論Googleのサーバーに送信しているはずだから、プライバシーのセキュリティ保護をやっているとはいえビッグデータ構築の材料として収集しているのは事実だろう。
対してアップルはご承知のようにプライバシーの核となるデータ類についてはそれぞれのデバイスに依存させており、アップルのサーバーに送られ蓄積し再利用されることはないという点が違う。

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※マイアクティビティ画面の例


今後、Google HomeにしろSiriにしろ進化の先が知りたいところだが、もし自立式のヒーマノイドといったものにこの種のAIが搭載されるとすればその仕組みはGoogle Home的なものになるに違いない。
しかし人工知能が我々人間と同様なことを考え判断するとなれば、そもそもが手足や体のない人工知能はなりたつのだろうか…。
そんなことを考えればGoogle HomeにしろSiriにしろ、この種のAIには決定的に欠けているものがあると思わざるを得ない。まだまだ期待し過ぎなのだ…というのが第一印象だった。

ともあれ現時点において個人的な目的から考えるとSiriを使える環境下にある私にとってGoogle Homeでなければならない理由はあまりない。
それこそGoogle HomeがmacOSをもサポートし、マイアクティビティによる答えをテキストとしてコピー&ペーストできれば便利かも知れないものの、繰り返すがGoogle Homeというプロダクトはあくまで手足が付く前哨戦のようにも思える。


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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員