ダグ・メネズ著「無敵の天才たち〜スティーブ・ジョブズが駆け抜けたシリコンバレーの歴史的瞬間」読了
ダグ・メネズ著「無敵の天才たち〜スティーブ・ジョブズが駆け抜けたシリコンバレーの歴史的瞬間」という大型本が翔泳社から発刊されたので早速手に入れた。本書は副題がそのまま内容を表しているが、スティーブ・ジョブズだけではなく 1985年から2000年までシリコンバレーで撮られた天才たちの写真集である。
本書に登場する人々をまずは紹介しておくと…スティーブ・ジョブズ、ジョン・ワーノック、ジョン・スカリー、ビル・ゲイツ、ジョン・ドーア、ビル・ジョイ、ゴードン・ムーア、アンディ・グローブ、マーク・アンドリーセン、ジェフ・ベゾスらだが、ロス・ペローやスーザン・ケアやスティーブ・ウォズアックの姿も写っている。

※ダグ・メネズ著/山形浩生訳「無敵の天才たち〜スティーブ・ジョブズが駆け抜けたシリコンバレーの歴史的瞬間」
写真集といってもそれぞれがリラックスしたプラペート空間で撮られている写真ではない。仕事場でさまざまな感情が吹き上がるその瞬間を写真家ダグ・メネズが捉えたものだ。
そもそもこうしたいまとなっては貴重な写真が記録され残ったのはダグ・メネズの運としかいいようがない。彼は1981年、ワシントンポストのキャリアを皮切りにフリーランスのドキュメンタリー写真家として活躍してきたが、折も折…スティーブ・ジョブズがAppleを辞めてNeXT社を起業するタイミングに出会い、ジョブズの許諾を受け自由に写真を撮ることを許されたのがきっかけだった。
ダグ・メネズが幸運だったのは気むずかしいスティーブ・ジョブズがNeXT社内を自由に歩かせ、撮影を許可したことだけでなく、その事実がシリコンバレーに知れ渡ると、AdobeやMicrosoft、Autodeskといった企業もダグ・メネズを信頼して同様な自由度を与えたことだ。それが後になってそれぞれの写真が意味のあるものとなり、貴重な記録として認知されるに至ったのだから面白い…。
ダグ・メネズ自身が本書の冒頭で述べているとおり彼は1985年から2000年の15年間、シリコンバレーでうごめく企業集団の活動を記録し続けた。彼はオフィシャルな写真ではなく企業の人々の日常生活を記録したかったという。無論穏やかなシーンは少なく緊張が伝わってくるような写真も多い。なぜなら彼・彼女らは成功を夢見て自身が持っている全てを危険にさらしていたからだ。
健康、正気、家族、キャリアもなにもかもだ。当然犠牲は大きく、結婚生活は破綻し、母親たちはオフィスの一郭で育児をするはめとなったり、エンジニアは発狂し、知り合いのプログラマは自殺したという。
成功ばかりが目立つシリコンバレーだが同じように失敗や挫折も大きかったのだ。
ダグ・メネズのカメラはその一瞬一瞬を共有しているかのように人々の歓喜や苦悩あるいは忘我の一瞬を捉えているように思える。
本書の序文でエリオット・アーウィットはいう。「メネズ氏はカメラ片手にその場に立ち会い、デジタル革命の重要な時期を記録し続けた。その主要なプレーヤーの多くと深く関わり合い、特別に許されたアクセスを最高に活用し、驚くべき天才ぶりを発揮する人々とその活躍が起きた時と場所を目撃し続けたのだった。」と…。
本書の魅力的な写真は手にとっていただかなければわからないが、私が本書に惹かれたのは珍しいスティーブ・ジョブズの写真といったものだけでなく、実はそれらが撮られたのが1985年から2000年の15年間だという点にある。
ダグ・メネズが記録したこの15年間はコンピュータテクノロジーが最も光輝いた時代であり、社会と人々の生活を大きく変えていった希有な時代であった。なによりも米国と日本という違いはあっても、私自身がこの同じ時期にパーソナルコンピュータテクノロジーの風を受けながらその業界内にいたという事実はいまとなっては凄いことだと思わざるを得ない。
1985年といえばMacintoshが登場した翌年である。個人的なことだが私はこの頃から100%趣味だったパソコンへの興味が仕事になっていくことを日にちを追う毎に実感し始めた時代だった。そして4年後の1989年に起業し2003年までアップルジャパンのデベロッパーとしてMac専門のソフトウェア開発会社を営んできた。
ただしビジネスとして光輝いていたのは1999年初頭あたりまでだったが、実にダグ・メネズが体験した15年はシリコンバレーと東京の違いはともかく、本書の帯にあるように「この夢のような瞬間は二度とこない」とある如くまさしくその時代に行き会わせた幸運は私の人生にとって何にも代え難いことであった。
本書の写真一枚一枚を眼前に開き、隅々まで眺めていると大げさでなく私にはスティーブ・ジョブズらの姿の向こうに同じ時期、一緒に仕事をさせていただいた各メーカーの方たちや親しくしていただいた業界の方たちの姿が浮かんでくる。
事のスケールは違ったとしても、コンピュータテクノロジーの大きなうねりのなかで意志を通じ合い、苦労を共にしたクライアントの人たちの表情が克明に浮かんでくる。写真の人々の表情を見るにつけ他人事とは思えず、自分自身の当時とすり合わせてしまう…。
とはいえ残念ながら私の身近にダグ・メネズはいなかったが、本書何十冊分のシャッターチャンスがまだまだ記憶の中に、そして心の中に溜まっているからこそ今でも意欲を失わずなんとか自分の立ち位置を保っていられるのだと思っている。
本書に登場する人々をまずは紹介しておくと…スティーブ・ジョブズ、ジョン・ワーノック、ジョン・スカリー、ビル・ゲイツ、ジョン・ドーア、ビル・ジョイ、ゴードン・ムーア、アンディ・グローブ、マーク・アンドリーセン、ジェフ・ベゾスらだが、ロス・ペローやスーザン・ケアやスティーブ・ウォズアックの姿も写っている。

※ダグ・メネズ著/山形浩生訳「無敵の天才たち〜スティーブ・ジョブズが駆け抜けたシリコンバレーの歴史的瞬間」
写真集といってもそれぞれがリラックスしたプラペート空間で撮られている写真ではない。仕事場でさまざまな感情が吹き上がるその瞬間を写真家ダグ・メネズが捉えたものだ。
そもそもこうしたいまとなっては貴重な写真が記録され残ったのはダグ・メネズの運としかいいようがない。彼は1981年、ワシントンポストのキャリアを皮切りにフリーランスのドキュメンタリー写真家として活躍してきたが、折も折…スティーブ・ジョブズがAppleを辞めてNeXT社を起業するタイミングに出会い、ジョブズの許諾を受け自由に写真を撮ることを許されたのがきっかけだった。
ダグ・メネズが幸運だったのは気むずかしいスティーブ・ジョブズがNeXT社内を自由に歩かせ、撮影を許可したことだけでなく、その事実がシリコンバレーに知れ渡ると、AdobeやMicrosoft、Autodeskといった企業もダグ・メネズを信頼して同様な自由度を与えたことだ。それが後になってそれぞれの写真が意味のあるものとなり、貴重な記録として認知されるに至ったのだから面白い…。
ダグ・メネズ自身が本書の冒頭で述べているとおり彼は1985年から2000年の15年間、シリコンバレーでうごめく企業集団の活動を記録し続けた。彼はオフィシャルな写真ではなく企業の人々の日常生活を記録したかったという。無論穏やかなシーンは少なく緊張が伝わってくるような写真も多い。なぜなら彼・彼女らは成功を夢見て自身が持っている全てを危険にさらしていたからだ。
健康、正気、家族、キャリアもなにもかもだ。当然犠牲は大きく、結婚生活は破綻し、母親たちはオフィスの一郭で育児をするはめとなったり、エンジニアは発狂し、知り合いのプログラマは自殺したという。
成功ばかりが目立つシリコンバレーだが同じように失敗や挫折も大きかったのだ。
ダグ・メネズのカメラはその一瞬一瞬を共有しているかのように人々の歓喜や苦悩あるいは忘我の一瞬を捉えているように思える。
本書の序文でエリオット・アーウィットはいう。「メネズ氏はカメラ片手にその場に立ち会い、デジタル革命の重要な時期を記録し続けた。その主要なプレーヤーの多くと深く関わり合い、特別に許されたアクセスを最高に活用し、驚くべき天才ぶりを発揮する人々とその活躍が起きた時と場所を目撃し続けたのだった。」と…。
本書の魅力的な写真は手にとっていただかなければわからないが、私が本書に惹かれたのは珍しいスティーブ・ジョブズの写真といったものだけでなく、実はそれらが撮られたのが1985年から2000年の15年間だという点にある。
ダグ・メネズが記録したこの15年間はコンピュータテクノロジーが最も光輝いた時代であり、社会と人々の生活を大きく変えていった希有な時代であった。なによりも米国と日本という違いはあっても、私自身がこの同じ時期にパーソナルコンピュータテクノロジーの風を受けながらその業界内にいたという事実はいまとなっては凄いことだと思わざるを得ない。
1985年といえばMacintoshが登場した翌年である。個人的なことだが私はこの頃から100%趣味だったパソコンへの興味が仕事になっていくことを日にちを追う毎に実感し始めた時代だった。そして4年後の1989年に起業し2003年までアップルジャパンのデベロッパーとしてMac専門のソフトウェア開発会社を営んできた。
ただしビジネスとして光輝いていたのは1999年初頭あたりまでだったが、実にダグ・メネズが体験した15年はシリコンバレーと東京の違いはともかく、本書の帯にあるように「この夢のような瞬間は二度とこない」とある如くまさしくその時代に行き会わせた幸運は私の人生にとって何にも代え難いことであった。
本書の写真一枚一枚を眼前に開き、隅々まで眺めていると大げさでなく私にはスティーブ・ジョブズらの姿の向こうに同じ時期、一緒に仕事をさせていただいた各メーカーの方たちや親しくしていただいた業界の方たちの姿が浮かんでくる。
事のスケールは違ったとしても、コンピュータテクノロジーの大きなうねりのなかで意志を通じ合い、苦労を共にしたクライアントの人たちの表情が克明に浮かんでくる。写真の人々の表情を見るにつけ他人事とは思えず、自分自身の当時とすり合わせてしまう…。
とはいえ残念ながら私の身近にダグ・メネズはいなかったが、本書何十冊分のシャッターチャンスがまだまだ記憶の中に、そして心の中に溜まっているからこそ今でも意欲を失わずなんとか自分の立ち位置を保っていられるのだと思っている。
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