Apple Adjustable Keyboardを再考する
アップルはデザインとインターフェースに優れたコンピュータメーカーとして知られてきた。これまでにも期待に恥じない素晴らしい製品を多々開発してきたが、反面意気込みは強かったものの市場に受け入れられないために短命に終わった製品も目立つ。今回はそうしたプロダクトの一つ「Apple Adjustable Keyboard」をご紹介してみよう。
Apple Adjustable Keyboardが発売されたのはアップルがQuickTimeを前年度にリリースしたことから盛んにマルチメディア指向を探っていた1993年だった。
国内では最初ASCII キーボードが、そしてしばらく経ってからJISキーボードが発売されたと記憶している。米国価格はUS$219だったが国内では5万円ほどしたはずだ。まだADB (Apple Desktop Bus)時代のことだ。

※Apple Adjustable Keyboardパッケージ
まずはそのパッケージだが、当時もそのサイズと重さに驚いたものだ。パッケージの形は台形で広い方の横幅が約48cm、狭い方で約41cmほど。そして奥行きが28cmで高さが12.5cm、重さは3Kgほどあった。
パッケージの材質はダンボール製で地味だが作りはなかなか凝っていた。
まず上蓋を上げると3重になっており、一番上はマニュアルやドライバーソフト、フロッピーディスケット、そして2本のADBケーブルが収納されているがその打箱のカバー上部にはアップルロゴの形に切り抜かれている。

※蓋を開けると一番上の箱にアップルロゴが抜いてある
次ぎに出てくるのがキーボード本体と専用パームレストが、そして一番下はテンキーユニットだ。私の手元に残っているのはUSAバージョンというASCII 版だが、QWERTYキー配列に特別な点はないが人間工学とかエルゴノミクスと騒がれた時期の製品だけに現在のキーボードとは大きく異なった点が多い。



※外装の中は3段に。上からマニュアル類およびケーブル、キーボード本体、テンキーユニット
まず本体側のキーボードだがスペースキーのサイズに目を奪われる。そして付属のパームレストが手前側に左右ふたつ取り付けられるようになっているが、このキーボードはなんと手前側が左右に拡がるように開くことだ。そして背面には滑り止め処理はもとよりキーボードの角度が変えられる折り畳みのスタンドがある。


※キーボードにパームレストを取り付ける(上)。キーボード本体を左右に開いたところ(下)
また何よりも目立つのは別ユニットのテンキーユニットの存在だ。そこにはカーソルキーとファンクションキーが集中しているものの、そのデザインは本体と統一が取れたものとしても形状はキーボード本体と橫に列べて置くにはしっくりしない。

※パームレストを付けたテンキーユニット
さらに粗探しみたいだが、例えばキーボード本体左上には例の6色アップルロゴが埋め込まれているが、テンキーユニットの同じ位置には単に型押しのアップルロゴがあるだけだ。コストの問題だろうが、変なところでみみっちい…。


※キーボード本体には6色アップルロゴがあるものののテンキーユニットには刻印だけだ
Apple Adjustable Keyboardは、ユーザーそれぞれの利用環境とある程度の特性に配慮し、自分にとって楽なアプローチで打鍵ができるよう配慮されたキーボードだった。そして確かにキーストロークもよく、当時のパソコンキーボードとしては良質な製品であることは間違いなかったと考える。
ではユーザーに歩み寄ったといわれたApple Adjustable Keyboardは成功したかといえばアップルの目論見は成功しなかった。
それはその後、Apple Adjustable Keyboardを踏襲したトータルデザインが継承されなかったことを考えれば明らかだろう。
エルゴノミクスといえば聞こえは良いものの、当時のアップルはそれを広め、多くのユーザーに使いたいと思わせる力がなかったというしかない。

※ケーブルは接続していないが、こうして本体とテンキーを横に並べると少なくとも幅60cm以上のスペースが必要となる
そもそも一番の問題は、利用面積を広く占有しなければApple Adjustable Keyboardの利点を満喫できないことだ。パームレストはもとより、キーボード本体を開き左右のキートップに角度を付け、さらにテンキーを隣に置くにはかなり恵まれたデスク環境でなければ使えない。実際に計測してみると横幅は最低でも60cmの空間が必要となる。
アップルは人間工学を考慮したのだろうが、大げさに言うなら環境工学、いや…生活工学とでもいうべき多くの人たちの現実を考慮に入れなかったとしか言いようがない。
そうした意味においてApple Adjustable Keyboardは、アップルというメーカー側の理想だけを指針に製品化した、アップルらしいといえばアップルらしい特異なプロダクトだっといえる。
Apple Adjustable Keyboardが発売されたのはアップルがQuickTimeを前年度にリリースしたことから盛んにマルチメディア指向を探っていた1993年だった。
国内では最初ASCII キーボードが、そしてしばらく経ってからJISキーボードが発売されたと記憶している。米国価格はUS$219だったが国内では5万円ほどしたはずだ。まだADB (Apple Desktop Bus)時代のことだ。

※Apple Adjustable Keyboardパッケージ
まずはそのパッケージだが、当時もそのサイズと重さに驚いたものだ。パッケージの形は台形で広い方の横幅が約48cm、狭い方で約41cmほど。そして奥行きが28cmで高さが12.5cm、重さは3Kgほどあった。
パッケージの材質はダンボール製で地味だが作りはなかなか凝っていた。
まず上蓋を上げると3重になっており、一番上はマニュアルやドライバーソフト、フロッピーディスケット、そして2本のADBケーブルが収納されているがその打箱のカバー上部にはアップルロゴの形に切り抜かれている。

※蓋を開けると一番上の箱にアップルロゴが抜いてある
次ぎに出てくるのがキーボード本体と専用パームレストが、そして一番下はテンキーユニットだ。私の手元に残っているのはUSAバージョンというASCII 版だが、QWERTYキー配列に特別な点はないが人間工学とかエルゴノミクスと騒がれた時期の製品だけに現在のキーボードとは大きく異なった点が多い。



※外装の中は3段に。上からマニュアル類およびケーブル、キーボード本体、テンキーユニット
まず本体側のキーボードだがスペースキーのサイズに目を奪われる。そして付属のパームレストが手前側に左右ふたつ取り付けられるようになっているが、このキーボードはなんと手前側が左右に拡がるように開くことだ。そして背面には滑り止め処理はもとよりキーボードの角度が変えられる折り畳みのスタンドがある。


※キーボードにパームレストを取り付ける(上)。キーボード本体を左右に開いたところ(下)
また何よりも目立つのは別ユニットのテンキーユニットの存在だ。そこにはカーソルキーとファンクションキーが集中しているものの、そのデザインは本体と統一が取れたものとしても形状はキーボード本体と橫に列べて置くにはしっくりしない。

※パームレストを付けたテンキーユニット
さらに粗探しみたいだが、例えばキーボード本体左上には例の6色アップルロゴが埋め込まれているが、テンキーユニットの同じ位置には単に型押しのアップルロゴがあるだけだ。コストの問題だろうが、変なところでみみっちい…。


※キーボード本体には6色アップルロゴがあるものののテンキーユニットには刻印だけだ
Apple Adjustable Keyboardは、ユーザーそれぞれの利用環境とある程度の特性に配慮し、自分にとって楽なアプローチで打鍵ができるよう配慮されたキーボードだった。そして確かにキーストロークもよく、当時のパソコンキーボードとしては良質な製品であることは間違いなかったと考える。
ではユーザーに歩み寄ったといわれたApple Adjustable Keyboardは成功したかといえばアップルの目論見は成功しなかった。
それはその後、Apple Adjustable Keyboardを踏襲したトータルデザインが継承されなかったことを考えれば明らかだろう。
エルゴノミクスといえば聞こえは良いものの、当時のアップルはそれを広め、多くのユーザーに使いたいと思わせる力がなかったというしかない。

※ケーブルは接続していないが、こうして本体とテンキーを横に並べると少なくとも幅60cm以上のスペースが必要となる
そもそも一番の問題は、利用面積を広く占有しなければApple Adjustable Keyboardの利点を満喫できないことだ。パームレストはもとより、キーボード本体を開き左右のキートップに角度を付け、さらにテンキーを隣に置くにはかなり恵まれたデスク環境でなければ使えない。実際に計測してみると横幅は最低でも60cmの空間が必要となる。
アップルは人間工学を考慮したのだろうが、大げさに言うなら環境工学、いや…生活工学とでもいうべき多くの人たちの現実を考慮に入れなかったとしか言いようがない。
そうした意味においてApple Adjustable Keyboardは、アップルというメーカー側の理想だけを指針に製品化した、アップルらしいといえばアップルらしい特異なプロダクトだっといえる。
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