ラテ飼育格闘日記(315)

ラテと生活し始めて丸6年が過ぎ、7年目となった。この間オトーサンは体調的にもきつい時期があったしラテにしてもアトピー発症という辛い問題もあるが、オトーサンが日々1番注意している点は他者とのトラブルを未然に防ぐということだ。具体的にいうならラテの場合、散歩の途中で注意しなければならないのはある種の人間たちに対してなのである。                                                                                                         
ラテは一般的に猫に会えば喜ぶし、小学生や中学生といった子供たちが大好きだから行き交う場合でも相手に飛びかかって怪我をさせたり…といった心配は少ない。というか万一にでもそんなことにならないようオトーサンはリードの引き方に注意を払っているつもりである。無論これまでに1度も理由はともあれ他人に噛みついたり、怪我をさせたといったことはない。
ただし、どのような心理によるものかは分からないが前記したように子供たちが大好きな反面、男女問わず年寄りが嫌いな点は特筆すべきかも知れない(笑)。

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※紅葉が進む道をラテと散歩


散歩の途中でもラテの姿を見て声をかけてくれるのは総じて年配者が多い。年の頃なら私より一回り以上年上のお婆さんやお爺さんが近寄ってきて「いい犬だねぇ…」などと声をかけてくれるケースは多いが、ラテはそうしたとき必ず猛烈に吠えかかる。したがってほとんど場合、会話はそれで終わりでオトーサンは「申し訳ありません…」といいながらラテを遠ざけることになる。
ノラ時代のトラウマでもあるのかとも思うが、OLや若い男性の場合には吠える確率は少ない。オトーサンは疑問を感じて色々と観察してきたが、どうやら秘密の一端は老人たちの動きにあるように思う…。

あくまでラテにとっての感覚なので他意はないが、動きの鈍い人やノーマルでない動きをする人に対しては警戒する傾向がある。怖いのだろう…。
例えば腰を曲げてゆっくりと歩いてる人、ストレッチのつもりなのだろうが後ろ向きに歩いてる人(笑)、小さなダンベルを両手に持ち、腕などを回しながらすれ違う人などは苦手のようだ。また極端に多くの紙袋などをぶら下げている人も苦手だ。
先日も朝早く駅のコンコースでラテが吠えだした。
ふと前を見ると小太りの年配男性が近づいてくるが、その足取りは極端に遅くやっと歩いている。想像するに脳梗塞などを患いリハビリ直後で思うようには歩けないようにも思えるが、通勤のためか駅に向かうその足取りは数センチずつしか進まない。

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※この日は噴水のある公園まで遠出した


本来そうした身体が不自由な人には優しく接しなければならないのだが、ラテにはそうした歩き方、動き方をする理由がわかるわけでもなく、ただただ異様であり警戒心を持つようで吠えかかるので困る。
最近は大分慣れたが、最初のうちは杖をついて歩く人や車いすの人、そしてバギーを押している人にも吠えるので困ったくらいである。
したがって要領がわかったオトーサンはすれ違うとき、距離感も重要だがまず年寄りがいる場合にはリードを極端に短く持ち、そしてなるべく近づかないように…場合によっては避けて通るようにしたりオヤツを与えて気を逸らす。

しかしそうしたオトーサン側の気遣いが役に立たない人たちもいる。実に困った人たちでムカッとくるが、それが若い人たちではなく年寄りに多い事はなんだか世相を表すようで悲しい。
オトーサンだってすでに年寄りの仲間に入っているが、とにかく…なんて言えばよいか、彼ら彼女らは頑なで我が強いので危ないのだ。
例えば遊歩道にしても一般道にしても特別の場合は別にしてオトーサンは人通りがあるとき、当たり前のこととして右側を通行するように心がけている。さらに安全のためにラテはオトーサンの右に付けている。これはラテ自身が自転車や車と接触しないようにという配慮であると共に、すれ違い様に他人に飛びついたりしないための安全策でもある。そして夕方から夜には明るいライトを点け、危ないものが落ちていないかの確認と同時に「ここにワンコがいますよ」という主張をしているつもりだ。

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※このカメラ目線には何か不満を感じるのだが(笑)


しかし困ったことにそうして右側を歩いている…それも大層な余裕を持ってではなく本当にできうる限り端を歩いているオトーサンたちのその右側を突っ切る輩がいることだ。
ということはそうした輩は左側通行していることになり、多くの場合はマナー違反なのだが、オトーサンたちを避けようともせず…こちらが避けるべきとでも思うのか…僅かの隙間を直進しようとする…。無論相手はこちらの存在に気がついているのに…である。
比較的狭い歩道などではオトーサンたちの左側を自転車などが行き来することもあり、オトーサンが左に移動できない場合もあるからそれをやられるとラテが驚き噛みつかないか心配で緊張する。まるで老人の当たり屋みたいだ…。

残念なことにそうした無茶をやるのが例えば子供だったり、あるいはスマホに夢中になっている若い人…というなら分からないでもないものの、物の道理をわきまえている筈の年配者なのだから最低である。まさか惚けているわけでもあるまい(笑)。それも杖をつきつき歩いているならともかく矍鑠とした歩きでまさに「俺様が通るのだから道を空けろ」とでも言いたいのか、中にはこちらを睨みつけながらラテの頭を膝で擦るように通っていく奴もいる。オトーサンは正直蹴りでも入れてやりたいところだが(笑)そうもいかず、ラテのリードを最大限に引き可能な限り道を譲るしかない。
幸いこれまでラテがそうした相手の膝になどに噛みついたことは無いが、万一そんなことがあったら問題視されるのは結局オトーサンたちに違いない…。

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※塀の上にいた野良猫に笑顔を向ける...


そういえばトラブルには至らなかったが印象的な事件がひとつあった…。
すでに随分と前のことになるが、オトーサンはラテを連れて馴染みのカフェのテラスで一休みしていたときのことだ。
確か土曜日の朝だったか、女房も一緒だったものの店内へオーダーのため入っていたのでテラスの入り口付近の席に陣取ったオトーサンとラテの他に客は一人もいなかった。そしてラテは大人しく伏せていた…。
オトーサンの記憶では「コツン、コツン!」と大きな音がした瞬間にラテが伏せたまま「ワン!」と大きく吠え、すぐに「ドン!」と鈍い音がした。

オトーサンが視線を上げると年の頃が80歳前後だろうか、男性がカフェのエントランス入り口で膝を折り四つん這いになっていて、そばに杖が転がっていた。どうやら男性はラテの吠え声で驚き膝をついてしまったようだった。
ラテとしては木製の床に伏せていただけに…男性の突く杖の音と共に振動が身体に響いたのだろう、驚き「ワン!」と吠えてしまったわけだが、決して飛びつこうとしたわけではなく腹ばいのままだった。しかし男性が吠え声に驚いたのは間違いない。
オトーサンはラテのリードを持ったまま近づくわけにはいかないので、ラテを回りの鉄柱に縛ってから男性に駆け寄り「大丈夫ですか?」と起こそうとしたが男性はゆっくりとオトーサンの手を振り払い身体を起こしながらも「犬はあんたの犬か?」と不機嫌そうに聞く。オトーサンは「そうですが…」と応える。

それでもオトーサンはは男性を近くの椅子に座らせながら、もしかしたらこれは厄介なことになるかも知れないと覚悟をしながら「この店は犬を連れてきても良い場所なのでよく立ち寄るんですよ」と柔らかくいった。男性は「しかし吠えたから驚いて転んだのは事実だ。ズボンも汚れてしまった」と怒りが納まらない様子。ただ幸いに怪我などはないようで男性は杖を持ち直して自力で椅子に座り直した。
法律的にこの場合、オトーサンがどのような立場になるのか素人に分かるはずもないが、かといって例えば「これ洗濯代にしてください」とお金を出すのもかえって失礼であり、相手によっては事を荒立てるかな…等と思いあぐねた瞬間、驚いたことに男性の態度ががらりと変わった…。

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※ストーブの明かりを受けながら微睡むラテ。しかし前足の傷が痛々しい


「そう、うむ…そう…私は犬が嫌いでは無く好きだったんだ…」といいながらオトーサンに手を差し出したのだ。無論握手のためである…。
あまりの変貌にというか予期しない展開にオトーサンは逆に警戒したぐらいだが、続けて男性は「私も不注意だった。驚いてきつい言葉を吐いたがいまのは忘れてください」とにこやかにいう。
オトーサンも反射的に「驚かして申し訳ありませんでした。今後はより気を付けます」といいながら差し出されたその手を握り返して和解は済んだ。
その後男性とは同じ場所で出会うこともあるが、軽い会釈をするようになったし、確かにワンコ好きなようでワンコが集う公園のベンチに座っている姿を見かけることもある。

思えばこのとき、相手がいわゆる良い人でラッキーだったのだ。事が拗れればやはり面倒なことになるはずだった…。
これを教訓にし、オトーサンは年寄りがカフェのエントランスに入ってくるときにはラテのリードを引き、注意をそらしながら万一にも吠えないように気配りするようになった。
まあしかし、カフェに立ち寄っても落ち着いてコーヒー一杯飲めないのは悲しいことだが、これも臆病なワンコを飼っている責任上、仕方のないことだろう。
ともあれオトーサンの子供の頃、年寄りは宝だと教わった。無論立派な年配者も多いに違いないし、年寄りは若い人たちの模範になるべき人生経験を持っている筈だと思うが、現実はどうにも年寄りに危ない輩が多いように思えて残念でならない。
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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員