ジョブズとゲイツの不思議な友好関係
最近ワイアード・ニュースのコラム『ジョブズとゲイツ、真の「善玉」はどっち?』に多くの反応があったようだがその是非はともかく、これまでAppleとMicrosoft...あるいはジョブズとゲイツはどちらかが善で一方が悪といった表裏の関係で語られてきた。しかし歴史を振り返ると両者は最初期から意外に親密な関係にあることがわかる。
これまで当サイトでも一部紹介してきた内容と重複するがジョブズとゲイツとの親交の歴史を眺めてみよう...。
Macintoshが登場した翌年の1985年に早くもアスキーから「Macintosh〜そのインテグレーテッドソフトの世界」と題する翻訳本が出版された。その巻頭ページによれば本書はMicrosoft社のビル・ゲイツとApple Computer社のスティーブ・ジョブズの会話から生まれたと記されている。
1984年に登場したMacintoshは当然の事ながらその開発は秘密裏に行われていた。しかしアプリケーションプログラムが不可欠なこともありMicrosoft社など数社には厳重な機密保持契約の取り交わしの元でその技術的な仕様などを公開していたが「Macintosh〜そのインテグレーテッドソフトの世界」はビル・ゲイツ自身が同社の出版部門からMacintoshの解説書を出版したらどうかという提案をしたことから始まったという。したがってMacintoshの本格的な解説書の出版はゲイツとジョブズ同意の上でのことだった...。

※1985年にアスキーから発刊された「Macintosh〜そのインテグレーテッドソフトの世界」。和訳で読める本格的な解説書としては最初期のものだ
そうした経緯もあって...そしてゲイツ自身もMacintoshを評価し気に入っていたようだが1984年10月に作成されたMacintosh最初期カタログにも当時の若かりしビル・ゲイツが大きく載っている。この事だけでもAppleとMicrosoftは悪い仲ではなかったことが一目瞭然である。


※Macintoshのリリースと同時に配布された最初期の製品カタログ(写真上はその表紙)にはLotus Development社のMitch Kapor氏、Software Publishing社のFred Gibsons氏と共にMicrosoft社のBill Gates氏(写真下の左側)もその姿が掲載されている
また先日来大きなニュースとなったディズニーのPixar社買収だが、ご承知の通りスティーブ・ジョブズは1986年に1,000万ドルでPixar社の筆頭株主になり会長の座についた。しかし以降Pixar社は金食い虫でありジョブズはNeXT社よりはるかに多くの資金を投じていたという。
実はその際にもMicrosoft社あるいはビル・ゲイツの名が見え隠れする...。
なぜならジョブズは儲からないPixar社をMicrosoft社に売却できないかと一時は考えていたらしいがMicrosoft社は買収は断念したもののその代わりとして特許ライセンス費用として多額の金を払ったことでPixar社ははじめて四半期決算に利益計上することができた。無論この話はPixar社の3Dアニメーション「トイ・ストーリー」が封切られ大成功する1995年11月以前のことである。
この際Microsoftの「特許ライセンス費用支払」という事実は私にとって大変象徴的な出来事に思える。
何故なら1997年8月6日、Appleに暫定CEOとして戻ってきたスティーブ・ジョブズはボストンで開催されたMACWORLD Expoにおいて衝撃的な発表をする。そのひとつが取締役会の大規模なリストラだった。そしてそれ以上にショックだったのがMicrosoft社との特許クロスライセンスおよび技術開発契約を結んだという発表だった。
このときMicrosoft社がApple社に支払った額は公表されていないので分からないがこの事実でApple社の財政が一息ついたことは事実のようだ。
この出来事は前記したPixar社のときと同一パターンであるように思えるのだ。
Appleはギル・アメリオCEO時代にもMicrosoft社すなわちビル・ゲイツに両社に存在していたトラブルの和解を求めていたがうまくいかなったことを考えると1997年の特許クロスライセンスおよび技術開発契約に至る締結はやはりゲイツとジョブズの個人的な信頼関係あるいは秘密裏の利害一致によるものだとしか考えられない。
一言でいえばユーザーや業界はジョブズとゲイツをあらゆる面で比較し、善玉と悪玉に据えて面白おかしくストーリーを展開させることに時間を割いてきたが実際の2人は一般に考えられている以上に親密なのではないだろうか。
先のBoston Expoの際、スクリーンにビル・ゲイツの顔が大写しになったとき、聴衆の多くからはブーイングが飛んだ。しかしジョブズはそれをたしなめ「Appleが成功するためにはMicrosoftが負けなければならないという考えは捨て、Appleは前進すべきだ」とスピーチしたことはまだ記憶に新しい。
2人には...求める方向は別だとしても同じ時代に行き会わせたという共通意識が強く結びあっているのかも知れない。
今回AppleはIntelプロセッサを採用することになったが、その対応をめぐってもAdobe社など反応が冷たい企業とは対象的にMicrosoftは即サポートを明言し協調関係をアピールしている点は興味深い。
ともかくこうしてジョブズとゲイツのこれまでの関係を考えていくなら冒頭に記したワイアード・ニュースのコラムは時代認識性を欠いた旧態依然の視点から一歩も出ていない中身のない記事であることは明白であろう。
これまで当サイトでも一部紹介してきた内容と重複するがジョブズとゲイツとの親交の歴史を眺めてみよう...。
Macintoshが登場した翌年の1985年に早くもアスキーから「Macintosh〜そのインテグレーテッドソフトの世界」と題する翻訳本が出版された。その巻頭ページによれば本書はMicrosoft社のビル・ゲイツとApple Computer社のスティーブ・ジョブズの会話から生まれたと記されている。
1984年に登場したMacintoshは当然の事ながらその開発は秘密裏に行われていた。しかしアプリケーションプログラムが不可欠なこともありMicrosoft社など数社には厳重な機密保持契約の取り交わしの元でその技術的な仕様などを公開していたが「Macintosh〜そのインテグレーテッドソフトの世界」はビル・ゲイツ自身が同社の出版部門からMacintoshの解説書を出版したらどうかという提案をしたことから始まったという。したがってMacintoshの本格的な解説書の出版はゲイツとジョブズ同意の上でのことだった...。

※1985年にアスキーから発刊された「Macintosh〜そのインテグレーテッドソフトの世界」。和訳で読める本格的な解説書としては最初期のものだ
そうした経緯もあって...そしてゲイツ自身もMacintoshを評価し気に入っていたようだが1984年10月に作成されたMacintosh最初期カタログにも当時の若かりしビル・ゲイツが大きく載っている。この事だけでもAppleとMicrosoftは悪い仲ではなかったことが一目瞭然である。


※Macintoshのリリースと同時に配布された最初期の製品カタログ(写真上はその表紙)にはLotus Development社のMitch Kapor氏、Software Publishing社のFred Gibsons氏と共にMicrosoft社のBill Gates氏(写真下の左側)もその姿が掲載されている
また先日来大きなニュースとなったディズニーのPixar社買収だが、ご承知の通りスティーブ・ジョブズは1986年に1,000万ドルでPixar社の筆頭株主になり会長の座についた。しかし以降Pixar社は金食い虫でありジョブズはNeXT社よりはるかに多くの資金を投じていたという。
実はその際にもMicrosoft社あるいはビル・ゲイツの名が見え隠れする...。
なぜならジョブズは儲からないPixar社をMicrosoft社に売却できないかと一時は考えていたらしいがMicrosoft社は買収は断念したもののその代わりとして特許ライセンス費用として多額の金を払ったことでPixar社ははじめて四半期決算に利益計上することができた。無論この話はPixar社の3Dアニメーション「トイ・ストーリー」が封切られ大成功する1995年11月以前のことである。
この際Microsoftの「特許ライセンス費用支払」という事実は私にとって大変象徴的な出来事に思える。
何故なら1997年8月6日、Appleに暫定CEOとして戻ってきたスティーブ・ジョブズはボストンで開催されたMACWORLD Expoにおいて衝撃的な発表をする。そのひとつが取締役会の大規模なリストラだった。そしてそれ以上にショックだったのがMicrosoft社との特許クロスライセンスおよび技術開発契約を結んだという発表だった。
このときMicrosoft社がApple社に支払った額は公表されていないので分からないがこの事実でApple社の財政が一息ついたことは事実のようだ。
この出来事は前記したPixar社のときと同一パターンであるように思えるのだ。
Appleはギル・アメリオCEO時代にもMicrosoft社すなわちビル・ゲイツに両社に存在していたトラブルの和解を求めていたがうまくいかなったことを考えると1997年の特許クロスライセンスおよび技術開発契約に至る締結はやはりゲイツとジョブズの個人的な信頼関係あるいは秘密裏の利害一致によるものだとしか考えられない。
一言でいえばユーザーや業界はジョブズとゲイツをあらゆる面で比較し、善玉と悪玉に据えて面白おかしくストーリーを展開させることに時間を割いてきたが実際の2人は一般に考えられている以上に親密なのではないだろうか。
先のBoston Expoの際、スクリーンにビル・ゲイツの顔が大写しになったとき、聴衆の多くからはブーイングが飛んだ。しかしジョブズはそれをたしなめ「Appleが成功するためにはMicrosoftが負けなければならないという考えは捨て、Appleは前進すべきだ」とスピーチしたことはまだ記憶に新しい。
2人には...求める方向は別だとしても同じ時代に行き会わせたという共通意識が強く結びあっているのかも知れない。
今回AppleはIntelプロセッサを採用することになったが、その対応をめぐってもAdobe社など反応が冷たい企業とは対象的にMicrosoftは即サポートを明言し協調関係をアピールしている点は興味深い。
ともかくこうしてジョブズとゲイツのこれまでの関係を考えていくなら冒頭に記したワイアード・ニュースのコラムは時代認識性を欠いた旧態依然の視点から一歩も出ていない中身のない記事であることは明白であろう。
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