3Dプリント用フィラメントドライヤー「PrintDry」ファーストインプレッション

3Dプリンターをほとんど毎日活用するようになったが、そうなるとフィラメントそのものにも注視するようになってくるが一番の問題は湿度による劣化だ。フィラメントは湿度に弱く、フィラメントに含まれる湿度の高さは、造形精度やノズル詰まりなどに大きな影響を与える原因の一つとされている。


湿度が高いこの時期に、フィラメントを3Dプリンター「FLASHFORGE Inventor」の庫内にしろ室内にしろ、そのまま数日放置すれば確実に劣化が起きる。
「FLASHFORGE Inventor」はフィラメントの交換も容易なので使用後大切なフィラメントは外して防湿庫に保存するよう心懸けてはいるが、種類が多くなるとなかなか思うようにはいかず庫内や庫外に放置する時間が長くなってしまいがちだ。

では一度湿気を帯びてしまったフィラメントから湿気を取り去ることは出来ないのだろうか。
調べて見ると方法は電子レンジを使う…などいくつかあるようだがどれも不確定要素が多く、失敗したら元も子もなくなる。そしてそもそも一端湿気を含んだフィラメントから湿気を取り去るのは意外と難しいという。

PrintDry_01.jpg

※セッティングが終わった「PrintDry」


そんなあれこれを考えていたとき、ウェブで専用のデバイスが存在することを知った。
それは「PrintDry」という製品だったが、Kickstarterで成功裏に資金を調達しプロダクト化に成功したという。しかし残念な事に日本で販売はされていないだけでなくメーカー自体日本への発送はしていない…。

「PrintDry」はフィラメント専用の乾燥機で、単にフィラメントの乾燥をというだけでなく乾燥(防湿)を行いながら3Dプリンターへ1.75mmまたは3mmのフィラメントを直接供給できる。
さらにひとつのスプールを供給しながら上部のケース内で追加のフィラメントスプールを乾燥させることもできる。

さて「PrintDry」の理屈だが、フィラメントは空気中から水分を吸収した後、水の分子はフィラメントのポリマーと結合し強固なものとなる。
「PrintDry」は熱を使用しまずはポリマーと水の分子結合を弱め、破壊し、水の分子が自由に動くことを可能にする。そして適切な風量はフィラメントに熱を運ぶと同時に遊離した水分子を運び去る役割をする。
ただし、フィラメントは瞬時に乾燥させることはできず、まずは水分子とポリマーとの結合を弱めるため適切な温度で加熱する必要があり、同時に蒸発させ拡散するため十分な時間が必要となる。
「PrintDry」は、そうした理屈に基づいて設計されているのだという。
となれば、これは愛用の3Dプリンター「FLASHFORGE Inventor」の庫外にセッティングするフィラメントローダーとして最適なデバイスに違いない。

とはいえ購入できないとなれば余計に欲しくなるのが人情(笑)。さらに調べて見るとこの「PrintDry」はどうやら既存の食品乾燥機「ドライフードメーカー」といった類の上部トレイ部位をフィラメント専用収納ケースに置き換えた製品のようだと分かった。
事実ネットにはこのドライフードメーカーのトレイを改造してフィラメント乾燥機に…という記事もあった。これなら自分でも簡単にできると考え早速当該ドライフードメーカーを注文したが、経緯は省くが本家の「PrintDry」そのものも入手できてしまった!
この無駄な買い物は自分でも困ったものだと思っているが、性分なので仕方がない(笑)。

しかし事実上同じ効果を生むにしても本家純正品の方がそのために設計されている訳だし魅力的だし効果的だろう。それに「PrintDry」は前記したようにケースが上下にセットでき、乾燥しながらフィラメントをスムーズに供給できるが「ドライフードメーカー」は乾燥はできても供給できる設計にはなっていない。

PrintDry_04.jpg

※トレイ横にはフィラメントを外に導く穴が空いている


さて、「PrintDry」は本体サイズ:370×370×360mmの円筒形だが意外に大きい。机上の空いてる場所に…というレベルではないからきちんと置き場所を確保する必要がある。
乾燥のキモは温度と乾燥時間だが、PLAとかABSといった樹脂の違いにより乾燥温度と乾燥時間が違ってくる。
マニュアルによると例えば湿度が50%、温度が22℃の室内で500gのフィラメントを乾燥させる場合、 PLAならドライヤー温度 45°C、乾燥時間 4時間。ABSではドライヤー温度 60°C、乾燥時間 2時間となっている。

PrintDry_02.jpg

※電源スイッチと温度設定ノブ


ただし「PrintDry」の問題だが温度設定はダイアルで可能だがタイマー機能が内蔵されていないことだ。コストダウンのためか、あるいは元々ドライフードメーカーの転用製品だからかは不明だが、タイマーがないと経過時間を気にしていなければならない。フィラメントは乾燥し過ぎてもまずいからだ。

そこで以前、暖房機器を購入した際におまけで付いてきた「REVEX」プログラムタイマーを取り出して活用することにしたがこれで完璧だ。

PrintDry_06.jpg

※プログラムタイマー「REVEX」


蛇足だが「PrintDry」はフィラメントの乾燥だけでなくこれまでフィラメント保存時に使用していた防湿材(シリカゲル乾燥剤)なども、再利用のために乾燥することが出来る。
なおより乾燥効率を高めるためには一般的なスプールより同梱の組立式 D-spool を使った方がよいという。それはそうで見るからに左右の円盤で保護され、しっかりと巻かれているフィラメントに温風は通りにくいから時間がかかりそうだ。しかしいちいち D-spool に巻き直すなど簡単にできるはずもない。

PrintDry_07.jpg

※組立式の D-spool


まあまあここまでは確かに良かったのだが雑な思いつき故か難が見つかった。
何故なら「PrintDry」の110~120V/250Wはともかく60Hz専用仕様だったことだ。ちなみに220~240Vの場合は50Hzだという。この辺が日本への出荷をしない理由なのかも知れないが事前の確認不足が露見してしまった…。
しかし例えばヘアードライヤーに例えるならモーターの出力及び回転スピードが若干遅くなると同時にヒーターの出力も微々たるものだが落ちる程度なはずだから安全を確認しながらまずはテストをしてみるつもり…。またケース部位の造形が雑で、ベースユニット本体に乗せるにしてもぴったりしっくりといかない。

そしてもうひとつ問題が…。
動作中は設定温度によるものの当然ながら熱風が澱む。したがってそれでなくともこの季節、暑い室内で冷房を掛けながらというのもナンセンスなので私の場合、夏期は3Dプリンターの隣で乾燥させるのは無理と判断した。したがって乾燥のための稼働場所を考えなければならない。

PrintDry_03.jpg

※スプールを乗せるフィラメント・フィーダー(中央)


最後に同梱品だがフィラメントフィーダーが付いた本体とトレイが2つ、上段トレイと底板(メタルプレート)、蓋の他にスプールクリップ、D=spool 2組、上段用フィーダーそしてシリカゲルが多数付いていた。
ともあれ3Dプリンターの利用環境も何だか次第に大がかりになって来た。
次回はせっかくだから(笑)「PrintDry」とドライフードメーカーの違いを検証し、可能なら両者を組合せて「PrintDry」の国内版を作ってみたいと考えている。



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主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。マネキン造形研究中。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。ゆうMUG会員