アナログチックなMacアプリケーションの逸品「Toy Shop」とは?

過日数人のMacユーザーと話をする機会があった。その席で何がきっかけだったか...私が「Toy Shop」といったアナログチックなアプリケーションの名を出したが1人も知っている方がいなかった。最近はよい意味でデジタルで完結するアプリケーションがほとんどだが黎明期にはいまでは考えられないユニークな製品が多々登場したのである。


そんなMacintoshに関するアプリケーションの歴史において最終的にアナログというか、手にとって遊べるアイテムを作るために登場したソフトウェアがいくつか存在する。その代表格で忘れられない製品のひとつが「Toy Shop」なのである。

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※Macintosh 128K用の製品として1986年リリースの「Toy Shop」パッケージ


無論例えばワードプロセッサもプリンタで印刷して仕事が完結するわけだから、ある意味ではタイプライターを模したアナログチックなソフトウェアだと捉えることもできるかも知れないが、Macintoshの最初期は現在よりプリンタという機器が物作りに活躍したともいえようか...。何しろMacintoshはある種の文房具だといってもよいシーンも多々存在したのである。

さて「Toy Shop」は良質のソフトウェアを提供するパブリッシャーとして知られているBroderbund Software社から1986年にリリースされたMacintosh 128K用の製品であった。
私自身はこの製品をどこで手に入れたかについてすでに記憶がないものの、日本に入ってきた最初のロットだったと聞かされたことは覚えている。ただし「Macの達人」には1986年12月に「Toy Shop」の名が登場するので入手はその前後だったのかも知れない。

それはともかく、この頃のソフトウェアパッケージは現在のようにダウンロード販売などない時代だしエコうんぬんといった配慮もなかったから大ぶりで確かな手応えがあるものが多かった。特にこの「Toy Shop」は手にしてみるとずっしりとした重さがある。

なぜなら一般的なパッケージのようにマニュアルとフロッピーディスクといった同梱内容だけに留まらない「Toy Shop」独特な内容だったからだ。
何しろそこにはしっかりとしたマニュアルと3枚のフロッピーディスク、そして厚紙、竹籤、針金、輪ゴム、たこ糸、風船が入っているのである。

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※パッケージにはマニュアルとフロッピーディスクの他、工作の材料となる厚紙、竹籤、針金、輪ゴム、たこ糸、風船が同梱されている


古参のMacintoshユーザーならどこかでこの「Toy Shop」のことをお聞きになったことがあると思うが、これはMacintoshと当時のドットインパクト式のプリンタであるImageWriterで厚紙に印刷した展開図をハサミやカッターナイフで切り取り、糊で接着して可動式の模型を組み立てるというユニークな製品だったのである。

どのようなものが作れるのか...をざっと列記してみるとアンチークなトラック、メリーゴーランド、日時計、紙飛行機、竹とんぼならぬ紙とんぼ、ジェット改造車、メカニカルな振り子、クラシックカー、重量計、蒸気機関、起重機など魅力的なものばかりである。

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※「Toy Shop」で作るメリーゴーランドの解説ページ


無論メリーゴーランドは回り、起重機は各部位が動作し遊べるのだ!ただし一見オモチャっぽいツールではあるがパッケージにも “Ages 12 Years to Adult” とあるように幼年向きのものではないし事実起重機などの組立やメカニカルな調整などはかなり複雑であるからして大人でも十分に楽しめると思う。というか、お父さんが子供のために「Toy Shop」で何かを組み立てたらきっと子供たちの目はキラキラ輝くに違いない。勿論主な材料は紙だから、それぞれのパーツや本体を好きな色で塗ってみるのも楽しいと思う。

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※「Toy Shop」で作る起重機の解説ページ。きちんと動かすにはしっかりとした調整が必要


私はかなり以前に付属の用紙ではなく別の用紙にディスクに含むデータを印刷し組み立てたことがあったが、製品同梱のパーツをそのまま残して置きたかったので購入時のパーツは現在もそのまま残っている。
デジタルで完結するアプリケーションはそれはそれで良いが、パーソナルコンピュータによるこうした類の楽しみも忘れたくないものである。
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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員