iPhone XRとScandyProによる3Dスキャンの照明についての考察

iPhone XRとScandyProによる3Dスキャンでいかに完成度の高いモデリングができるかに苦心しているが、表面だけならともかく360度ぐるりのデータをと考えると難しいことが多々立ちはだかる。そのひとつはiPhoneの動かし方だ。いかにトラッキングを見失わないようにするかだが、もうひとつは照明のあり方だ。


別途「ScandyProによる3Dスキャニング Tips」にも記したが照明はとても重要だ。ただし2D写真で使われるハイライトとシャドウを強調するドラマチックな照明は、 3Dスキャンでは適切に機能しない場合が多い。通常、最高の3Dスキャン結果を得るには拡散光源から均等に照明された被写体がベストである。
ということで私はある範囲を均等に照らすことが出来るリング照明を自作し使っているが基本的には具合が良い。しかし例えば被写体が人物だとしてその360度ぐるりをスキャニングしようとすれば照明もそれだけ設置しなければ均等な結果にはならい。

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※自作したScandyProとiPhoneによる3Dスキャンのための究極の?照明システム


また例え理想的な照明設備を整えたにしろ問題は100%解決しない。
単純なオブジェクトのスキャニングならともかく、人物といったものを対象とすれば正面回りに照明を配しても、例えば鼻や顎の下、髪や服のウェーブなど必ずといって影の部位ができる。そしてスキャンを多々やってきた経験からしていえば、暗い部位はテクスチャーが汚れるし場合によってはスキャンの取りこぼしとなる。
無論iPhoneをいかに上手に操ったとしてもだ…。とはいえ360度すべてを理想的な照明の場にすることはまず無理だろう。

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※照明およびトラッキングが十分でない部位は取りこぼしができるし、この例だと鼻の穴あたりも形が崩れている


でもいろいろと考えてみたのが、まずは自分の持つ設備で最善の照明をやった上でのことだが、iPhoneに補助照明を付けるというアイデアだった。だとすればiPhoneが狙う場所は常に照明が当たり、限りなく暗い場所がなくなるという理屈である。
勿論照明にしてもスキャンする対象のサイズや形状にもよる。照明が強すぎれば結果は白飛びした映像となるからできれば照明は調光機能があることが望ましい。

私のiPhone XRとScandyProの3Dスキャンは基本自作の「デュアルiPhoneグリップ」を使うことだ。これだと機動性もあるし幾多のテストの結果、スキャニングの結果も上々だからだ。
ではこの「デュアルiPhoneグリップ」の適当な場所に引出しに転がっていたLEDライトを取り付ければ事は足りるのではないかと試作をしてみたが、スキャンを邪魔せずにと考えると難しかった。

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※小型「自撮りライト」


なにかよいものはないかとAmazonで探してみたところiPhoneのカメラ部位に挟む小型「自撮りライト」を見つけた。これを「デュアルiPhoneグリップ」に取り付けたiPhone XRのインカメラ側に挟み込めば、重量も軽いしUSB充電で使え調光もできるだけでなくインカメラがリングライトの中央に位置するので具合もよろしい。
事実テストをした結果は上々だった。

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※「自撮りライト」を取り付けた自作「デュアルiPhoneグリップ」


問題があるとすればただひとつ、光量と光の拡散する範囲が小さいことだ。スキャンする対象によっては力不足となる可能性大だ。
そこでiPhone XRとScandyProの3Dスキャン専用で究極の?機器構成も組み立ててみた。
照明は10インチのリングライトだ。この種の製品にも多々種類があるが、これにした理由は考えた形にできそうなアダプター類が豊富だったことだ。

これに手元にあったツール類を組合せて手持ちができる範囲のものをと考えたのがご紹介するセットである。
リングライト中央にはiPhone XRを設置でき、そのモニター用としてiPhone 6s Plusとモバイルバッテリーを取り付けられるようにした。なおモバイルバッテリーはリングライト用が主だが、ついでにバッテリーが持たなくなってきたiPhone 6s Plusを充電しながら使うことも目指している。

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※リングライトシステムの骨組み


この10インチリングライトは調光ができるし色温度も3種変化できるし光量も今回の目的であれば十分だ。そのアダプターの下にこれまた同梱されていた簡易三脚を取り付ければ、自立させることもできるし、三脚の足を畳んでスキャニンクジ時に保持するグリップにもなる。
一応考えて機材を組み込んだトータル重量だが2000g未満と保持し続けるにもまずまず苦にならない。

さらにこのリングライトにはオマケ的に面白いアイテムが同梱されていたのだが、これがまた大いに役に立ったのだ。それはBluetoothコントロールのカメラリモコンである。これを見た時閃いたことがあった…。

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※Bluetoothコントロールのカメラリモコンは必須!


どういう構成にしろ2台のiPhoneを組合せて3Dスキャンする際、iPhone XRのスキャン開始ボタンを押すこととスキャンを終えるときに再度ボタンを押さなければならない。しかしiPhone XRはインカメラ側液晶にソフト的なボタンが表示される訳でそれをスキャンする対象に向けているから見えない。
またそのボタンはボリュームボタンで代替することも可能だが押しにくいことこの上なかった。

このスキャン開始および終了をリモコンでできないかと考えたわけだが、幸いなことに苦も無くできた。これは本当に楽だしボタンを押す場合に機器を揺らしたり傾けたりしなくてよいのでスキャニングに悪影響も生じさせないで済む。

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※リングライトシステムで実際にスキャニングを実施中


リングライトは直径約48cmの本格的なものをメインライトとして使っているが、この25cmほどの小型のリングライトも3Dスキャンとは別に撮影時の照明のひとつとしても重宝する。

ということでこのリングライトシステムと前記したデュアルiPhoneグリップを目的に従って適宜使い分けることにしているが、私の3Dスキャンの最終目的は人物なのでこうした工夫を積み重ねることで何とか理想に近い結果を出したいと考えている。



※まだまだ完全にはほど遠いが、横顔のラインも鼻の穴もトラッキングが正確になったし顎の下もより取りこぼしが少なくなった






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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員