古本「ひよっこ茶人の玉手箱」とリサ・ジョブズの接点
世の中、たまたま偶然では説明できない面白いことが起きる。私は若いときから茶道に興味を持っていたものの縁がなくこれまで師匠についてきちんと勉強したことはない。しかし先日Amazonの中古本で「ひよっこ茶人の玉手箱」という本を見つけ面白そうだと注文した。
「ひよっこ茶人の玉手箱」は副題が「インターネットでお茶を楽しむ」とあるように堅苦しいマニュアル本といったものではなく、筆者がユーモアを交えながら茶道と縁が出来た自身の経験とその後を語るエッセイである。私は特に「男の茶の湯」という項に興味を持って読んでみようと考えた次第。
なにしろ本書は興味本位で手に入れたものであり、深い考えもなく、そもそも茶の湯に関する本などこれまで購入したことはなかった。しいていえば山本兼一著「利休にたずねよ」という小説を読んだことくらいか...。
子供の頃、母から三味線を習わされた時期の話だから遠い昔...師匠が略式ではあったのだろうが何度か茶席に同席させてくれたことがあった。男の子の弟子自体が珍しいからか、新橋の芸者上がりだという師匠は私を可愛がってくれた。
無論子供のことであり、私は茶より菓子の方に興味があったし、面倒な作法に関して五月蠅いことはいわれなかったがそれ以来、心のどこかに茶道という存在がひっかかってきたのである。

※松村栄子著「ひよっこ茶人の玉手箱」マガジンハウス刊表紙
さて注文した本がまだ届かないある日、見知らぬ方から一通の電子メールをいただいた。
それは当該ホームページに掲載した図版のことで問い合わせをいただいたものだが、その方はアメリカ・オレゴン州の裏千家協会、ポートランド和会茶道協会の人だったのである...。そう、京都生まれの日本人である。
さらに驚いたのはこのホームページがMac関連情報のものだからに違いないが、お問い合わせの追伸として「ちなみに、昔カリフォルニアにいたころ、リサ・ジョブズに日本語を教えていたことがあり、ずっとMacファンです。」と記されていたことだった。無論リサ・ジョブズとはあのスティーブ・ジョブズの娘である。
偶然に茶の湯に関する本をはじめてオーダーした翌々日にオレゴン州裏千家協会の茶道に関わる方からメールが届くなどということは確率的にどの程度あり得ることなのだろうか...。ましてやその方はMacユーザーであり、その後2度ほどのメールのやりとりの中でいただいた情報によればリサ・ジョブズが通っていたのは英才児のための自由学園みたいな学校であり、そのミドルスクール部は当時まだ新しく出来たばかりで全校生徒数が40数名のクラスだったという。そして外国語は日本語しか教えておらず、つまり日本語が必修科目だったとのこと。
リサ・ジョブズは7~8年生のとき2年間その日本語のクラスにいたが、7年のときはリサ・ブレナンで、8年生からリサ・ブレナンージョブズ( ジョブズに認知され養子に入った) になったことや、日本への修学旅行の間にたまたま彼女が誕生日を迎えたこともあり、その方の京都の実家で誕生パーティを催したことなどなど当時のエピソードをいくつかご紹介いただいた。

※スティーブ・ジョブズが妻ローリーンの勧めもあってリサを養子に迎えた直後の写真
特に印象深いエピソードとしてはスティーブ・ジョブズは、そのミドルスクールの校長/創立者が気に入ったらしく、リサ・ジョブズが卒業するとき「リサのための高校を作ってほしい」と頼んだようだが、校長/創立者はミドルスクールだけで手一杯だからと断ったらしい。
こうした家庭内のエピソードは記者たちが取材を重ねた情報には入らないものが多いわけで、私にとっては微笑ましい貴重なエピソードのひとつとして強く心に残るだろう。ともあれそのリサ・ジョブズはいま幸せなのだろうか...。
そうそう...肝心の「ひよっこ茶人の玉手箱」だが、本書を注文したばかりだと返事を申し上げた際に「ひよっこ茶人の玉手箱」はもとより筆者もご存じとのことだった。インターネット上の同じメイリングリスト会員らしい。
ともあれ茶道は本来本やインターネットの情報から学ぶというものではない。そうして得たものは単なる知識だけでしかなく本来は師匠、先生について学ぶものに違いないが、本書はその導入として予備知識のひとつとしてなかなか効果的で良書だと思った。ただし前記したようにすでに新品は入手しにくいのが問題だが、茶道に興味があり、まずは堅苦しくない形での情報を得たい方にはお勧めである。
それにしても面白い出会いがあるものだ!これだから世の中、捨てたものではない。
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「ひよっこ茶人の玉手箱―インターネットでお茶を愉しむ
」
2000年4月20日 第1刷発行
著 者:村松栄子
発行所:株式会社マガジンハウス
コード:ISBN4-8387-1161-1 C0095
定 価:1,500円(税別)
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「ひよっこ茶人の玉手箱」は副題が「インターネットでお茶を楽しむ」とあるように堅苦しいマニュアル本といったものではなく、筆者がユーモアを交えながら茶道と縁が出来た自身の経験とその後を語るエッセイである。私は特に「男の茶の湯」という項に興味を持って読んでみようと考えた次第。
なにしろ本書は興味本位で手に入れたものであり、深い考えもなく、そもそも茶の湯に関する本などこれまで購入したことはなかった。しいていえば山本兼一著「利休にたずねよ」という小説を読んだことくらいか...。
子供の頃、母から三味線を習わされた時期の話だから遠い昔...師匠が略式ではあったのだろうが何度か茶席に同席させてくれたことがあった。男の子の弟子自体が珍しいからか、新橋の芸者上がりだという師匠は私を可愛がってくれた。
無論子供のことであり、私は茶より菓子の方に興味があったし、面倒な作法に関して五月蠅いことはいわれなかったがそれ以来、心のどこかに茶道という存在がひっかかってきたのである。

※松村栄子著「ひよっこ茶人の玉手箱」マガジンハウス刊表紙
さて注文した本がまだ届かないある日、見知らぬ方から一通の電子メールをいただいた。
それは当該ホームページに掲載した図版のことで問い合わせをいただいたものだが、その方はアメリカ・オレゴン州の裏千家協会、ポートランド和会茶道協会の人だったのである...。そう、京都生まれの日本人である。
さらに驚いたのはこのホームページがMac関連情報のものだからに違いないが、お問い合わせの追伸として「ちなみに、昔カリフォルニアにいたころ、リサ・ジョブズに日本語を教えていたことがあり、ずっとMacファンです。」と記されていたことだった。無論リサ・ジョブズとはあのスティーブ・ジョブズの娘である。
偶然に茶の湯に関する本をはじめてオーダーした翌々日にオレゴン州裏千家協会の茶道に関わる方からメールが届くなどということは確率的にどの程度あり得ることなのだろうか...。ましてやその方はMacユーザーであり、その後2度ほどのメールのやりとりの中でいただいた情報によればリサ・ジョブズが通っていたのは英才児のための自由学園みたいな学校であり、そのミドルスクール部は当時まだ新しく出来たばかりで全校生徒数が40数名のクラスだったという。そして外国語は日本語しか教えておらず、つまり日本語が必修科目だったとのこと。
リサ・ジョブズは7~8年生のとき2年間その日本語のクラスにいたが、7年のときはリサ・ブレナンで、8年生からリサ・ブレナンージョブズ( ジョブズに認知され養子に入った) になったことや、日本への修学旅行の間にたまたま彼女が誕生日を迎えたこともあり、その方の京都の実家で誕生パーティを催したことなどなど当時のエピソードをいくつかご紹介いただいた。

※スティーブ・ジョブズが妻ローリーンの勧めもあってリサを養子に迎えた直後の写真
特に印象深いエピソードとしてはスティーブ・ジョブズは、そのミドルスクールの校長/創立者が気に入ったらしく、リサ・ジョブズが卒業するとき「リサのための高校を作ってほしい」と頼んだようだが、校長/創立者はミドルスクールだけで手一杯だからと断ったらしい。
こうした家庭内のエピソードは記者たちが取材を重ねた情報には入らないものが多いわけで、私にとっては微笑ましい貴重なエピソードのひとつとして強く心に残るだろう。ともあれそのリサ・ジョブズはいま幸せなのだろうか...。
そうそう...肝心の「ひよっこ茶人の玉手箱」だが、本書を注文したばかりだと返事を申し上げた際に「ひよっこ茶人の玉手箱」はもとより筆者もご存じとのことだった。インターネット上の同じメイリングリスト会員らしい。
ともあれ茶道は本来本やインターネットの情報から学ぶというものではない。そうして得たものは単なる知識だけでしかなく本来は師匠、先生について学ぶものに違いないが、本書はその導入として予備知識のひとつとしてなかなか効果的で良書だと思った。ただし前記したようにすでに新品は入手しにくいのが問題だが、茶道に興味があり、まずは堅苦しくない形での情報を得たい方にはお勧めである。
それにしても面白い出会いがあるものだ!これだから世の中、捨てたものではない。
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「ひよっこ茶人の玉手箱―インターネットでお茶を愉しむ
2000年4月20日 第1刷発行
著 者:村松栄子
発行所:株式会社マガジンハウス
コード:ISBN4-8387-1161-1 C0095
定 価:1,500円(税別)
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