18年前の魅力的な代物「Macintosh Portable」再考(1/2)

Apple社はその30年の歴史の中で多くの製品を開発してきたが、LisaやApple IIIのようにビジネス的に失敗した製品群もある。また失敗作ではないものの、Apple社の完全主義も祟ってか、少々異質と思われる製品も存在した。その代表格が「Macintosh Portable」ではないだろうか...。 


いま「Macintosh Portable」のバックライト液晶型を手にしてしばし感慨にふけっている。なぜなら「Macintosh Portable」が発表されたのはMacintosh IIciやSystem 6.0.4と一緒の1989年9月だが、その年は私が起業した年でもあったからだ。 

Macintosh Portable

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※18年ぶりに手に入れた「Macintosh Portable」の勇姿(笑)


無論当時Appleから「Macintosh Portable」が発表されたというニュースを知らなかったわけではないが、私は買わなかった...。 
いまその理由を考えるに、まずハードディスク搭載タイプで価格が116万8千円もしたこともあるかもしれない(爆)。ただしMacintosh II(150万円)よりは安かったから価格だけの問題ではなかった。 

二つ目に1989年といえば前記したようにMacintosh IIcxやciもリリースされ、こちらはカラーマシンの新型実用機として即買いしたことがあげられる。まあ、Macintosh IIciだって「Macintosh Portable」ほどではないにしても40MBのハードディスク仕様は97万8千円だったから、大変高価な代物だった。 

とはいえ、当時懐具合は悪くなかったはずだから購入する気なら何とかなったはずだ(笑)。そして「Macintosh Portable」を"かっこいい!"と思ったことはあっても、その大きな筐体に尻込みし、かつモノクロ液晶では起業した会社の開発ツールにはなり得ないと判断したのかも知れない...。何よりも目の前に新しくやらなければならないことが山積みされたわけで、個人的に新しいマシンを楽しむ時間的な余裕はまったくなかったことが最大の原因だったと思う。 

冷静になればなるほど「Macintosh Portable」はいろいろな意味でも凄いマシンだったし興味はあったが、今思えば"縁がなかった"ということになる。 
魅力の第一はバッテリー駆動だということ。Apple IIはもとよりだが、1984年に登場したMacintosh 128Kを初めとしてPowerBook 100が登場する1991年12月まで、いわゆるバッテリー駆動のApple純正品はなかった(1990年にOutBoundというMacのROMを使う互換ポータブルが登場したが)。 

「Macintosh Portable」は鉛蓄電池によるフル充電で最長12時間の連続使用が可能という、現在でも優れたスペックを持っていた。またポータブルという性格を考え、マウスオペレーションのスペースを必要としないようにとの配慮からか、キーボードの左右どちらにも設置可能なトラックボールも付いていた。しかし、当時まだ珍しい液晶モニターだったとはいえ、モノクロ2階調の表示はカラー環境を充実させたいと考えていた当時の私には魅力薄だった。 

まだまだ短所を探せばいろいろとある。ポータブルと名前は付いているものの、重量は7.2Kgもあった。これはMacintosh Plusの重さとほとんど変わらないのだ。したがって外部に持ち出す際には車でもなければ実用とならない。そしてなによりも筐体の幅や奥行きはMacintosh Plusなどよりはるかに設置面積を必要とした。 
要するに狭いスペースに暮らす私などには相性が悪かったのである。 

当時取引先の人が誇らしげに「Macintosh Portable」を私の会社に持参したことがある。それが「Macintosh Portable」の現物を見た最初だったが、本体はともかく、そのアップルロゴが付いている専用のキャリングケースが素敵で、それだけでも欲しいと思った(笑)。 

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※「Macintosh Portable」の専用キャリングケース。ショルダーストラップも付けられる


なにか言い訳がましいが、私は歴代のマシンをコレクションしようと考えたことは一度もなかった。ただ、金銭的なことも含めて手にできなかったマシンはLisaを含めていくつかあったが、屁理屈を言えばLisaは後からMacintosh XLだなんて名にすり替えられたが(笑)、私の中ではMacintoshファミリーではないとの判断もあり、あまり執着はない。どちらかというと「Macintosh Portable」を手にしなかったことに正直一抹の寂しさを感じていた...。
 
その私がいま「Macintosh Portable」を手にして思うことは、様々な革新的で新しい技術を素晴らしいデザインで私たちに示してくれたAppleも、時代の壁は破れなかったということを痛感している。さらに「Macintosh Portable」は、Appleの完全主義が生んだ当然の結果でもあったのだ。 
次回はその理由などについてお話ししたい。 



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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員