念願だった国公立所蔵史料刊行会編「日本医学の夜明け」セットを入手
医学を志す者でもない私が今般突飛でもないものを…というか貴重な資料を手に入れた。それが1978年6月に日本世論調査研究所から出版された「国公立所蔵史料刊行会編『日本医学の夜明け』」である。要は「タートル・アナトミア」「解体新書」「蘭学事始」などなどの復刻版、レプリカのセットである。
なお本原稿は以前別途に運営していたホームページに掲載したものだが、そのホームページを閉じた関係で当該ブログに残しておこうと考えたものである。
ネットでググってみて分かったことだが、本出版は日蘭修交三百八十年記念出版として出されたもので当時の価格は330,000円だったという。なお以下のものが専用の桐箱に収納されているが、桐箱のサイズは約481 × 221 × 300mm(突起物含まず)だ。
※日本世論調査研究所から出版された国公立所蔵史料刊行会編「日本医学の夜明け」一式が収納の桐箱
ちなみに同年1978年の12月、私はオールインワン型のパソコンである米国コモドール社製 PET2001をオプション込みでほぼ同額にて購入した記憶から、この額がかなりの大金であったことが実感できる。
さて、詳しい事情は知る由もないが、「日本医学の夜明け」は桐箱に収納されており、”帙(ちつ)” すなわち和本などの書物を保存するために包む覆いで厚紙を芯にして丈夫な布や和紙を貼り付けたものに各巻が保護され以下のものが含まれている。
※各書籍は、”帙(ちつ)” と呼ばれる被いに包まれている
ただし手に入れた桐箱は一部シミがあったり各書籍も一部変色が見られるが、嬉しいことに肝心の「タートル・アナトミア」などは新品同様だった。またどうやら桐箱入りのセットとは別に関連品「阿蘭陀医学伝来史絵図」と「日本医学の夜明け(史料・解説)」があったようだがこれらは付属していなかったので機会を見て入手したい。
※阿蘭陀語版「ONTLEED-KUNDIGE TAFELEN」。俗称「タートル・アナトミア」
●帙壱 「臧志」山脇東洋著(宝暦9年刊) 2巻、「解体新書」杉田玄白・前野良沢他訳(安永3年刊) 5巻
※杉田玄白・前野良沢他訳(安永3年刊) 「解体新書」
●帙弐 「和蘭医事問答」杉田玄白/建部清庵往復書簡(寛政7年刊) 2巻、「蘭学事始」杉田玄白著(明治2年刊) 2巻、「蘭学階梯」大槻玄沢著(天明8年刊) 2巻、「各骨眞形図」各務文献著(文化7年刊) 1巻
※「蘭学事始」杉田玄白著による玄白像
●帙参 「病学通論」緒方洪庵著(弘化4年刊) 3巻、「虎狼痢治準」緒方洪庵著(安政5年刊) 1巻、「魯西亜牛疾全書」利光仙庵著(嘉永3年刊) 2巻、「外科新編図」(50巻の内3巻) ゲッシェル著/杉田立卿訳(弘化2年) 3巻
●帙四 増補重訂 「内科撰要」宇田川玄真重訂(文政5年刊) 6巻
●帙五 「ターヘル・アナトミア/ONTLEED-KUNDIGE TAFELEN」(1734年刊) オランダ語版
●医療器具セット:模刻(江戸時代蘭方医の手術道具)
※医療器具セット:模刻(江戸時代蘭方医の手術道具)
さて現在の所、それぞれについて解説ができるほどの知識は持ち合わせていないのでご勘弁いただきたいが、取り急ぎ興味があるのは「解体新書」 5巻と洋書(オランダ語版)の「ONTLEED-KUNDIGE TAFELEN」である。
これまで「解体新書」および「蘭学事始」は現代語訳版で繰り返し読んできた。それは時代背景も含め、腑分けを経験した杉田玄白や前野良沢の驚きと共に手にした「ONTLEED-KUNDIGE TAFELEN」すなわち「ターヘル・アナトミア」を辞書もない時代に訳そうとした情熱に共感したからである。
今回内容に関しての詳しい話しは避けるが、この「解体新書」の出版は日本の歴史上、大げさでなく類を見ない快挙なのだ。詳しくは別途論じたいが、時代・人・場所といったすべてが噛み合わなければこのような偉業は成し遂げられるものではない。
ところで、前記したようにいまでは「解体新書」にしろ「蘭学事始」にしても本来漢文で書かれているものを現代語訳で楽々読める。ありがたいことだし、だからこそ私のような者もその内容や関わる歴史に興味を持つことが出来たのだが、例えば前野良沢や杉田玄白が初めて「ターヘル・アナトミア」を手にし開いたときの驚きと感動はその時代の装丁および内容でなければ本当の意味で伝わってこないとも思っていた。
書籍など内容が分かればそれで良いではないかと言われるかも知れない。無論内容を理解するには前記したように現代語訳があればこそなのだが、一冊の書籍だとしてもその装丁、サイズなどなどが原書と同じでなければ前野良沢や杉田玄白の喜びが伝わってこない気がしていた。まあ拘り病とでもいおうか(笑)。
その拘りを持ってこれまで例えばレオナルド・ダ・ヴィンチ「マドリッド手稿」ファクシミリ版やパウル・クレー「手稿~造形理論ノート」のファクシミリ版などを集めてきた。
だから「ターヘル・アナトミア」も拘りたいと思ってきたが、無論実物を手にすることなどできるはずもないから精巧なレプリカ、ここでは復刻版を手元に置きたかったのである。そして探しに探してやっと願いが叶った…。
もともと江戸時代の蘭学やら医療といったことに漠然と興味を持っていた。以前話題になりTVドラマにもなったコミック「仁」も好きだったし、だからこそ2017年にオリジナル時代小説を書こうと思い立った際にその主な舞台は小石川養生所とした。
無論当時の養生所の医師たちは漢方医だったが時代は急速に動き、50年も経つ頃には蘭学が盛んになりつつあり、蘭方医も増えてくる。
そうした時代背景を現在執筆している時代小説にも取り入れたいと勉強してきたので「日本医学の夜明け」は最良の歴史的資料でもあるのだ。
とはいえ「お前みたいな素人がそんなもの持っても何のつっかえ棒にもならない」と言われることは分かっている。そもそもオランダ語は読めないし、漢文だって同じだ。
しかし「ターヘル・アナトミア」は是非手にしたかった…。
くどいようだが内容は勿論、本物がどのようなものなのかを “感じたかった” のだ。
そういえばNHK 2018年正月時代劇「風雲児たち~蘭学革命篇~」で前野良沢(片岡愛之助)と杉田玄白(新納慎也)が手にする小道具としての「ターヘル・アナトミア」はたぶん私が手にしたものと同じ復刻版を使ったものと思われる。また刷り上がった五巻の「解体新書」を中川淳庵(村上新悟)が良沢に届けるシーンに使われた小道具もこの復刻版かも知れない。
※「解体新書」の一部
この「日本医学の夜明け」には他にも魅力的な文献が含まれるが、少しずつ調べて知識を得たいと考える。
最後に「ターヘル・アナトミア」という名について記しておきたい。
可笑しな事に一般的に前野良沢や杉田玄白が手にした解剖書を現代でも「ターヘル・アナトミア」と称しているが実はその原本にそうした表記はないのである。
「ターヘル・アナトミア」と言われている書はドイツ人医師ヨーハン・アーダム・クルムス(独 : Johann Adam Kulmus 1689年-1745年)の著書 "Anatomische Tabellen" のことで、1722年にダンツィヒで初版、1732年に再版されている。その後ラテン語、フランス語、オランダ語に訳されたが、前野良沢や杉田玄白が手にしたのはそのオランダ語訳の版だった。
そのオランダ語訳版 "Ontleedkundige tafelen" はオランダ人医師ヘラルト・ディクテン(Gerard Dicten 1696年?-1770年)の翻訳により1734年にアムステルダムで出版されたという。
そもそも「ターヘル・アナトミア」という書名は、杉田玄白の「蘭学事始」の中で使われている表記だ。そして漢文で書かれている「解体新書」には「打係縷亜那都米」と表記され「ターヘル・アナトミイ」とフリガナが付いている。さらに凡例の中で「ターヘル」が表、「アナトミイ」が解剖を意味しているとの適切な説明がある。
したがって本来は「解剖図表」といった程度の意味だからせめて「クルムス解剖書」とでもするのが妥当であるはずなのだ。
ということで「ターヘル・アナトミア」という名はどうやら俗称のようである。というのも繰り返すが原著名はドイツ語で「アナトーミッシェ・タベレン」、オランダ訳では「オントレートクンディヘ・ターフェレン」であり、いずれも「ターヘル・アナトミア」とはならない。
また扉絵に書かれているラテン語では「タブラェ・アナトミカェ」(Tabulæ Anatomicæ)となっており「ターヘル・アナトミイ」を彷彿とさせるが当然違う。
緒方富雄博士の著書「現代文 蘭学事始」の解説によれば、オランダ語の単数形に改め、形容詞を名詞に変えて後置修飾詞的に用いた「ターフェル・アナトミー」(tafel anatomie)とするとかなり近くなるという。そしておそらくはオランダ語の俗称が伝わるなりして我が国の蘭学者のあいだで「ターヘル・アナトミア」と呼ばれるようになったのではなかろうか…とのことだ。
ちなみに緒方富雄博士はあの緒方洪庵の子/緒方惟準の二男・緒方銈次郎の次男である。
そんなことを考えながら当該原稿を書き始めていたが、2019年3月21日にNHKの番組「英雄たちの選択」で「この本が日本を変えた!~杉田玄白“解体新書”誕生への挑戦~」が放映された同じ日にこの「日本医学の夜明け」セットを入手できたのだから偶然にしても感激であった。
ともあれ本セットは私にとって宝の持ち腐れであることを自覚しつつも知的好奇心を100%奮い立たせるアイテムなのである。
【主な参考文献】
・緒方富雄著「現代文 蘭学事始」岩波書店
・西村書店編集部編「解体新書 復刻版」西村書店
・杉田玄白著/片桐一男訳「杉田玄白 蘭学事始」
・杉田玄白著/酒井シズ訳「杉田玄白 解体新書」
・長尾剛「話し言葉で読める『蘭学事始』」
なお本原稿は以前別途に運営していたホームページに掲載したものだが、そのホームページを閉じた関係で当該ブログに残しておこうと考えたものである。
ネットでググってみて分かったことだが、本出版は日蘭修交三百八十年記念出版として出されたもので当時の価格は330,000円だったという。なお以下のものが専用の桐箱に収納されているが、桐箱のサイズは約481 × 221 × 300mm(突起物含まず)だ。
※日本世論調査研究所から出版された国公立所蔵史料刊行会編「日本医学の夜明け」一式が収納の桐箱
ちなみに同年1978年の12月、私はオールインワン型のパソコンである米国コモドール社製 PET2001をオプション込みでほぼ同額にて購入した記憶から、この額がかなりの大金であったことが実感できる。
さて、詳しい事情は知る由もないが、「日本医学の夜明け」は桐箱に収納されており、”帙(ちつ)” すなわち和本などの書物を保存するために包む覆いで厚紙を芯にして丈夫な布や和紙を貼り付けたものに各巻が保護され以下のものが含まれている。
※各書籍は、”帙(ちつ)” と呼ばれる被いに包まれている
ただし手に入れた桐箱は一部シミがあったり各書籍も一部変色が見られるが、嬉しいことに肝心の「タートル・アナトミア」などは新品同様だった。またどうやら桐箱入りのセットとは別に関連品「阿蘭陀医学伝来史絵図」と「日本医学の夜明け(史料・解説)」があったようだがこれらは付属していなかったので機会を見て入手したい。
※阿蘭陀語版「ONTLEED-KUNDIGE TAFELEN」。俗称「タートル・アナトミア」
●帙壱 「臧志」山脇東洋著(宝暦9年刊) 2巻、「解体新書」杉田玄白・前野良沢他訳(安永3年刊) 5巻
※杉田玄白・前野良沢他訳(安永3年刊) 「解体新書」
●帙弐 「和蘭医事問答」杉田玄白/建部清庵往復書簡(寛政7年刊) 2巻、「蘭学事始」杉田玄白著(明治2年刊) 2巻、「蘭学階梯」大槻玄沢著(天明8年刊) 2巻、「各骨眞形図」各務文献著(文化7年刊) 1巻
※「蘭学事始」杉田玄白著による玄白像
●帙参 「病学通論」緒方洪庵著(弘化4年刊) 3巻、「虎狼痢治準」緒方洪庵著(安政5年刊) 1巻、「魯西亜牛疾全書」利光仙庵著(嘉永3年刊) 2巻、「外科新編図」(50巻の内3巻) ゲッシェル著/杉田立卿訳(弘化2年) 3巻
●帙四 増補重訂 「内科撰要」宇田川玄真重訂(文政5年刊) 6巻
●帙五 「ターヘル・アナトミア/ONTLEED-KUNDIGE TAFELEN」(1734年刊) オランダ語版
●医療器具セット:模刻(江戸時代蘭方医の手術道具)
※医療器具セット:模刻(江戸時代蘭方医の手術道具)
さて現在の所、それぞれについて解説ができるほどの知識は持ち合わせていないのでご勘弁いただきたいが、取り急ぎ興味があるのは「解体新書」 5巻と洋書(オランダ語版)の「ONTLEED-KUNDIGE TAFELEN」である。
これまで「解体新書」および「蘭学事始」は現代語訳版で繰り返し読んできた。それは時代背景も含め、腑分けを経験した杉田玄白や前野良沢の驚きと共に手にした「ONTLEED-KUNDIGE TAFELEN」すなわち「ターヘル・アナトミア」を辞書もない時代に訳そうとした情熱に共感したからである。
今回内容に関しての詳しい話しは避けるが、この「解体新書」の出版は日本の歴史上、大げさでなく類を見ない快挙なのだ。詳しくは別途論じたいが、時代・人・場所といったすべてが噛み合わなければこのような偉業は成し遂げられるものではない。
ところで、前記したようにいまでは「解体新書」にしろ「蘭学事始」にしても本来漢文で書かれているものを現代語訳で楽々読める。ありがたいことだし、だからこそ私のような者もその内容や関わる歴史に興味を持つことが出来たのだが、例えば前野良沢や杉田玄白が初めて「ターヘル・アナトミア」を手にし開いたときの驚きと感動はその時代の装丁および内容でなければ本当の意味で伝わってこないとも思っていた。
書籍など内容が分かればそれで良いではないかと言われるかも知れない。無論内容を理解するには前記したように現代語訳があればこそなのだが、一冊の書籍だとしてもその装丁、サイズなどなどが原書と同じでなければ前野良沢や杉田玄白の喜びが伝わってこない気がしていた。まあ拘り病とでもいおうか(笑)。
その拘りを持ってこれまで例えばレオナルド・ダ・ヴィンチ「マドリッド手稿」ファクシミリ版やパウル・クレー「手稿~造形理論ノート」のファクシミリ版などを集めてきた。
だから「ターヘル・アナトミア」も拘りたいと思ってきたが、無論実物を手にすることなどできるはずもないから精巧なレプリカ、ここでは復刻版を手元に置きたかったのである。そして探しに探してやっと願いが叶った…。
もともと江戸時代の蘭学やら医療といったことに漠然と興味を持っていた。以前話題になりTVドラマにもなったコミック「仁」も好きだったし、だからこそ2017年にオリジナル時代小説を書こうと思い立った際にその主な舞台は小石川養生所とした。
無論当時の養生所の医師たちは漢方医だったが時代は急速に動き、50年も経つ頃には蘭学が盛んになりつつあり、蘭方医も増えてくる。
そうした時代背景を現在執筆している時代小説にも取り入れたいと勉強してきたので「日本医学の夜明け」は最良の歴史的資料でもあるのだ。
とはいえ「お前みたいな素人がそんなもの持っても何のつっかえ棒にもならない」と言われることは分かっている。そもそもオランダ語は読めないし、漢文だって同じだ。
しかし「ターヘル・アナトミア」は是非手にしたかった…。
くどいようだが内容は勿論、本物がどのようなものなのかを “感じたかった” のだ。
そういえばNHK 2018年正月時代劇「風雲児たち~蘭学革命篇~」で前野良沢(片岡愛之助)と杉田玄白(新納慎也)が手にする小道具としての「ターヘル・アナトミア」はたぶん私が手にしたものと同じ復刻版を使ったものと思われる。また刷り上がった五巻の「解体新書」を中川淳庵(村上新悟)が良沢に届けるシーンに使われた小道具もこの復刻版かも知れない。
※「解体新書」の一部
この「日本医学の夜明け」には他にも魅力的な文献が含まれるが、少しずつ調べて知識を得たいと考える。
最後に「ターヘル・アナトミア」という名について記しておきたい。
可笑しな事に一般的に前野良沢や杉田玄白が手にした解剖書を現代でも「ターヘル・アナトミア」と称しているが実はその原本にそうした表記はないのである。
「ターヘル・アナトミア」と言われている書はドイツ人医師ヨーハン・アーダム・クルムス(独 : Johann Adam Kulmus 1689年-1745年)の著書 "Anatomische Tabellen" のことで、1722年にダンツィヒで初版、1732年に再版されている。その後ラテン語、フランス語、オランダ語に訳されたが、前野良沢や杉田玄白が手にしたのはそのオランダ語訳の版だった。
そのオランダ語訳版 "Ontleedkundige tafelen" はオランダ人医師ヘラルト・ディクテン(Gerard Dicten 1696年?-1770年)の翻訳により1734年にアムステルダムで出版されたという。
そもそも「ターヘル・アナトミア」という書名は、杉田玄白の「蘭学事始」の中で使われている表記だ。そして漢文で書かれている「解体新書」には「打係縷亜那都米」と表記され「ターヘル・アナトミイ」とフリガナが付いている。さらに凡例の中で「ターヘル」が表、「アナトミイ」が解剖を意味しているとの適切な説明がある。
したがって本来は「解剖図表」といった程度の意味だからせめて「クルムス解剖書」とでもするのが妥当であるはずなのだ。
ということで「ターヘル・アナトミア」という名はどうやら俗称のようである。というのも繰り返すが原著名はドイツ語で「アナトーミッシェ・タベレン」、オランダ訳では「オントレートクンディヘ・ターフェレン」であり、いずれも「ターヘル・アナトミア」とはならない。
また扉絵に書かれているラテン語では「タブラェ・アナトミカェ」(Tabulæ Anatomicæ)となっており「ターヘル・アナトミイ」を彷彿とさせるが当然違う。
緒方富雄博士の著書「現代文 蘭学事始」の解説によれば、オランダ語の単数形に改め、形容詞を名詞に変えて後置修飾詞的に用いた「ターフェル・アナトミー」(tafel anatomie)とするとかなり近くなるという。そしておそらくはオランダ語の俗称が伝わるなりして我が国の蘭学者のあいだで「ターヘル・アナトミア」と呼ばれるようになったのではなかろうか…とのことだ。
ちなみに緒方富雄博士はあの緒方洪庵の子/緒方惟準の二男・緒方銈次郎の次男である。
そんなことを考えながら当該原稿を書き始めていたが、2019年3月21日にNHKの番組「英雄たちの選択」で「この本が日本を変えた!~杉田玄白“解体新書”誕生への挑戦~」が放映された同じ日にこの「日本医学の夜明け」セットを入手できたのだから偶然にしても感激であった。
ともあれ本セットは私にとって宝の持ち腐れであることを自覚しつつも知的好奇心を100%奮い立たせるアイテムなのである。
【主な参考文献】
・緒方富雄著「現代文 蘭学事始」岩波書店
・西村書店編集部編「解体新書 復刻版」西村書店
・杉田玄白著/片桐一男訳「杉田玄白 蘭学事始」
・杉田玄白著/酒井シズ訳「杉田玄白 解体新書」
・長尾剛「話し言葉で読める『蘭学事始』」
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